2022 Fiscal Year Research-status Report
一次資料に基づく世襲財産制の実証研究ープロイセン・ザクセン・南ドイツの比較地域史
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17K03842
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 房雄 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 名誉教授 (90104869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ドイツ史 / 世襲財産 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画調書記載の図書館・文書館調査については、ドイツ研修の予定であったが、新型コロナウィルス禍のため、前年度同様、断念せざるをえなかった。その代替的研修として、一橋大学社会科学古典資料センターが所蔵する「ギールケ文庫」を活用する貴重文献調査を二度行い、M.ウェーバーによる1904年の作品「世襲財産論」に関する学説史上重要な作品、G.v.べロウの「世襲財産増加の問題」(1905)や M.ゼーリングによるウェーバー批判論文(1910)を閲覧するとともに、ナッサウ史関連の実証研究に役立つ貴重な図書を発見して、資料化した。 新規の図書整備のため、BREPOLS社刊の「ヨーロッパ農村社会史研究シリーズ」(全16巻)を購入して、新しい研究動向の把握に努めた。特に、第5巻(R.Congost and R.Santos編のContexts of Property in Europe. The Social Embeddedness of Property Rights in Land in Historical Perspective, 2010)は、「所有権」(したがって、世襲財産を含む)の「社会的機能様式」を比較史的に分析している点で、本研究にとっても示唆に富む。研究成果の発表としては、『ドイツ大土地所有史論ーー世襲財産問題の諸相』を、2023年2月、広島大学出版会から公刊することができた。研究はほぼ計画どおり進捗し、これに続く新しい地平を展望した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、研究計画をほぼすべて完成させてから、全体を一書にまとめる作業を始める予定だったが、研究実績の概要に記載のとおり、2023年2月、『ドイツ大土地所有史論』を公刊して、この研究目的も一応達成した。令和5年度は、残された課題としての資料調査、ならびに、M.ウェーバー「世襲財産論」の翻訳とドイツ史の新しい実証研究に取り組む。研究は、「おおむね順調に進展している」線を超えて、「当初の計画以上に進展している」域に達しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究計画のほぼ順調な進捗によって見えてきた次の課題に取り組むことが、今後の研究の推進方策の基本である。当面、ウェーバーによる1904年の古典的業績である「世襲財産論」の素訳を完訳に仕上げることに集中する。本文の完訳は、ほぼ終了したが、膨大な注記はまだ素訳のまま残り、その上、訳者の注記と解説を外すことはできない。これらを一つ一つ丁寧に取り扱って、訳業を続けることが重要である。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進捗したとはいえ、この三年来の新型コロナのパンデミックにより本研究計画の重要な一環だったドイツでの資料収集については大幅な変更を余儀なくされた。幸い、一橋大学の「ギールケ文庫」の存在によって、代替的な文献検索と資料収集のめどは立ったものの、同文庫での研修の開始が令和4年度に遅れたため、重要文献の閲覧がまだ残っている。令和5年度に、この面での計画の完成を期すとともに、次の課題の遂行に邁進したい。使用計画として、国内研修と新規ノート型パソコンの購入に充てることを考えている。
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