2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K03843
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森 良次 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 教授 (10333999)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ経済史 / 労働集約型産業発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、工場制化の度合いが低く、家内工業や手工業など中小経営が支配的な産業をドイツにおける労働集約型産業と捉え、その動態を世界市場とそこにおける国際競争関係のなかに位置づけ評価するものである。2020年度は、ドイツ最大の玩具企業、Bing社の企業集中過程とマーケティング政策を検討した。その結果、次の点が明らかとなった。 ①Bing社の経営発展は、自社工場の生産能力の拡充によるよりも、むしろ企業買収によりもたらされたものである。その企業集中の特徴は、垂直統合指向が極めて低く、企業買収のほとんどはBing社と同じく玩具の完成品メーカーであったという点にある。垂直統合指向の強いアメリカ玩具産業とは対照的な経営発展の方向である。 ②企業集中の動機は、ライバル企業との競争回避や効率的な生産体制の構築にではなく、自社製品を拡充させることにあった。Bing社はドイツの主要玩具産地に購買センターを設置し、創業以来の卸売業務(買入制)を継続するとともに、自社デザイン・仕様の玩具を生産する中小経営と取引関係を形成した。Bing社が企業買収の対象としたのは、多くの場合、こうした取引関係をもつ企業であった。それは、自社製品を充実させることで、多種多様な製品群からなり流行の変化も著しい玩具市場において、優位に販売活動を展開しようというマーケティング上の要請にもとづくものであった。 ③その結果、経営規模は拡大しても、1工場当たりの生産規模に大きな変化はなく、また買収した工場の生産合理化や工場間の垂直分業が追及されることも稀であった。 ④中小経営が買収などにより所有者を変え工場を存続させる事例は、Bing社の場合に限らず玩具産業では一般的であり、同産業での企業規模拡大の背景には、規模の経済性の追求というだけでなく、マーケティング上の要請も存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的流行のため、予定していたドイツでの史料調査ができず、実証作業が停滞したため。
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Strategy for Future Research Activity |
手元にある史料・同時代文献を最大限活用し、その範囲に検討課題を絞って論文を執筆する。具体的には、ドイツ最大の玩具工場といわれたBing社を中心に経営史的研究の枠内で、ドイツ労働集約型産業の発展とその内実を明かにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的流行により、予定していたドイツでの史料調査が実施できず、また国内で開催される学会・研究会も全てオンラインでの実施となったため、旅費を使用しなかった。 2021年度は、ドイツでの史料調査を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)