2017 Fiscal Year Research-status Report
地方資産家による工業化投資行動と投資先企業の競争力構築を繋ぐ複数経路の実証研究
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17K03847
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三浦 壮 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (60432952)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筑豊炭田 / 麻生商店 / 石炭産業 / 華族資本 / 地方資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、地方資産家および投資先企業の資料収集と入力に時間を割いた。資料の状況がわかる施設から調査を進め、1年間かけて地方資産家の一次資料を収集した。調査では、結果として炭鉱資本家の複写に注力することになった。炭鉱資本家資料の複写について、想定外に多くの時間・費用を要することになったことが主因である。その他の資料については使うことができる時間と資金が少なく、論文は刊行されたが、資料調査については思うように進まなかった。 なお、複写資料の少なくない部分が洋式帳簿であり、文字が細かいため、印刷に耐えうるように写真を加工する作業をアルバイトを雇用して進めた。3か月間の雇用により、本年度に複写した資料はすべて加工が終了し、印刷を行いながら入力作業を進めている。ただ、資料を読み進めるうちに、解釈が難しい標記が多々あり、現時点で資料の癖を掴みきることができておらず、入力・分析には当初想定したものよりも多くの時間を要することが判明した。 一方、地方資産家研究の柱のひとつである吉川家については、経済史の有力学会誌に論文が掲載された。論文では投資先企業は多くの分析ができなかったが、株式(工業化)投資の実相については、①非匿名的な株式取得、②非市場的な買増(旧株を所有することによる新株引受、追加払込)の2段階の経路を経ることにより、時価よりも安価に優良株を取得し、投資収益率の向上が果たされたことを明らかにした。また、株式投資は一律の基準でなされるものではなく、非地元株と地元株については投資のスタンスが異なり、前者は吉川家の資産形成、後者は地元経済貢献の色が強く、線引きが可能なことが判明した。今後は投資先企業の資料を重ね合わせることで、本研究課題の進展が見込まれ、研究の基礎部分の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料調査については、当初、週1回のペースで宿泊を組み込んだ調査を行う予定であった。しかし、年度初めに、前年度教務委員を務めていた関係から避けがたい教務上の予定が生じ、まとまった出張日程を組むことが不可能となり、飛び石の日帰り調査を繰り返すこととなった。炭鉱資本家の資料の量が充実したものであったことも理由としてあげられるが、結果として、想定を大きく上回る調査時間と研究費を割くことを余儀なくされた。公務とは関係ないが、家族の事情等により、従来の研究時間を確保できない日が続いたことも、当初の想定にはない事態であった。 分析については、資料内容や表記方法にも独特の癖があり、構造を掴みきれなかった。そのため、炭鉱資本家資料の複写はかろうじて進展があったものの、資料情報の入力作業に手間取り、資料の分析が遅れることになった。その結果、その他の資料の調査・分析に時間がさけなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、炭鉱資本家資料の入力に注力する。現在入力作業中だが、資料の表記方法に癖があり、かなりの時間を割く必要があることが判明している。まずは炭鉱資本家研究を優先し、助成期間中の論文刊行を目指したい。華族資本家については投資先企業の資料収集を優先する。平成30年度前期はサバティカルなので、東京電気や三井・三菱の系列企業の資料調査を行うことにしたい。
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Causes of Carryover |
前倒し申請を行ったが、想定よりも報償費がかからなかった。次年度使用額は、平成30年度分の報償費として計画している。
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