2017 Fiscal Year Research-status Report
地域イノベーションを創出する組織間ネットワークの境界決定要因に関する分析
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17K03881
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50303342)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域イノベーション / 組織間ネットワーク / 特許分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域イノベーションを創出する企業を中心とした組織間ネットワークの境界が、どのような要因によって規定されているのかを分析し、効果的な広域ネットワークを構築するための経営課題を明らかにすることを目的としている。本年度は、組織間ネットワークの境界を変化させる要因を、(1)M&Aによる地域企業の内部資源及び業界ポジションの変化、(2)大学との共同研究の実施、(3)公設試験研究機関による地域企業への技術支援という3つの側面から検討した。(1)については、ディスプレイ装置の開発・製造において顕著な実績を有する北陸地域の企業を事例として取り上げ、2007年に実施された外国企業からの事業買収の前後において、当該企業の技術的な内部資源と業界内部での技術的な優位性がどのように変化したのかを特許データを用いて分析した。この分析の結果、2007年の事業買収は当該企業が強みとしていた視聴覚技術の特許群を一層強化するための「選択と集中」を指向する性格を有するものであったこと、この事業買収の結果、関連する特許ファミリーの占有率における当該企業のランキングが上昇していたこと等が明らかになった。また、(2)については、研究代表者が客員研究官として協力している文部科学省科学技術・学術政策研究所において実施した質問票調査のデータを用いて分析した。この分析により、企業が大規模な共同研究を大学との間で実施する際の主たる理由が、自社内にない技術的資源の補完にあること等が明らかになった。(3)については、研究代表者が開発した「地域科学技術イノベーション政策支援システム」に登録されているデータベースを活用し、公設試験研究機関と地域企業の連携関係を分析した。この分析により、連携が効果的に遂行される要因は、人的資源の相互補完にあること等が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初、経済産業省「産業クラスター計画」及び文部科学省「知的クラスター創成事業」による採択事業から事例を抽出し、インタビュー調査に基づく事例分析を行うことを計画していたところ、事例抽出作業の過程で、事業成果に関する守秘義務により必要十分な情報提供を受けられない事例が少なからず生じることが懸念された。このため、計画していた研究方法を一部修正し、特許データや地域政策関連データ等の既存データベースを活用する方法に切り換えることとした。これにより概念モデルの検証に要するデータは取得されたため、初年度は概ね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要において記述した要因分析のうち、(2)及び(3)については初年度中に発表できたが、(1)については未発表であるため、補足的な分析を加えた上で2年度目に論文としてとりまとめて発表する。2年度目は当初予定通り「境界固定化の罠」に関する分析に進むため、分析に要するデータベースを構築する。また、データベースを用いた分析が早期に進展すれば、分析により得られた知見を検証するためのケーススタディに着手する。
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