2019 Fiscal Year Research-status Report
地域イノベーションを創出する組織間ネットワークの境界決定要因に関する分析
Project/Area Number |
17K03881
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究院, 教授 (50303342)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 地域イノベーション / 組織間ネットワーク / 組織の境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域イノベーションを創出する企業を中心とした組織間ネットワークの境界が、どのような要因によって規定されているのかを分析し、効果的な広域ネットワークを構築するための経営課題を明らかにすることを目的としている。 本年度は、まず地域の中核的企業を対象として前年度に実施した分析の精緻化を行った。前年度は組織間ネットワークの境界を変化させる要因の1つとしてM&Aを取り上げ、地域中核企業の事例として抽出したEIZO株式会社が2007年に実施したSiemensの医療用モニター事業の買収について、それが同社の技術的な内部資源と業界ポジションをどのように変化させたのかを特許出願データを用いて分析した。本年度はEIZOの企画部及び知的財産部に対するインタビュー調査を行い、分析結果の妥当性を確認するとともに、特許データを修正・補完した。 この分析結果は、組織間ネットワークの境界が変化することに伴うインセンティブを明らかにするものであったが、境界の決定要因を包括的に把握するためには、より多角的な分析を行う必要がある。そこで本年度は、経済産業省「地域新生コンソーシアム研究開発事業」によって形成された組織間ネットワークの管理法人を調査対象として想定し、ネットワークの広域性、中心性、参加組織の多様性とその変化、実施したプロジェクトのアウトプット及びアウトカムなどに関するデータを取得するための質問票を設計した。参加組織の変化については、従来、組織の境界変化の規定要因として考えられてきた限定合理性や情報の非対称性との関連を把握するための変数を考案した。 この質問票を用いた調査は、当初2019年度中に実施する予定であったところ、新型コロナウィルスのため調査対象組織が通常営業を妨げられ、調査の実施に適さない事態となったため、補助事業期間の延長を申請した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初計画の研究方法や分析の枠組みを一部修正したものの、特許データ等の既存データベースを活用する方法に切り換えた後の分析は、ほぼ予定どおり進展した。しかし、既存データでは、本研究の眼目である「境界固定化の罠」などの仮説検証に踏み込む上での限界があるため、新たに質問票調査の実施を計画したところ、新型コロナウィルス感染拡大のため、調査の実施を先送りすることを余儀なくされた。この遅れは外的な要因によるものであることから、「おおむね順調に進展している」と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染が沈静化し、調査対象法人が通常営業に戻った時期を見計らって質問票調査を実施する。調査データを用いて組織間イノベーションの境界を規定する要因に関する包括的な分析を行い、これまでの事例研究の結果と併せて研究成果をとりまとめる。
|
Causes of Carryover |
当年度中に質問票調査の実施を予定していたところ、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い調査の実施に適さない状況となったため、延長申請を行い、実施にかかる役務委託費等を次年度に繰り越すこととなった。次年度は、感染拡大の終息状況をみて調査を実施する。
|