2020 Fiscal Year Annual Research Report
Determinant Factors on Boundary of Inter-Organizational Networks for Creating Regional Innovation
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17K03881
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究院, 教授 (50303342)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域イノベーション / 組織間ネットワーク / システムの境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域イノベーションを創出する企業を中心とした組織間ネットワークの境界(参加組織の地域的な範囲)が、どのような要因によって規定されているのかを分析し、効果的な広域ネットワークを構築するための経営課題を明らかにすることである。 当課題の開始当初は2019年度が最終年度となる計画であったが、同年度中の実施を予定していた調査が新型コロナウィルス感染防止対策のため延期を余儀なくされたため、研究期間を2020年度に延期することとなった。2020年度は感染拡大状況に配慮しながら、経済産業省「地域新生コンソーシアム研究開発事業」の終了プロジェクト326件を対象として、郵送法とWeb法を併用した質問票調査を2020年12月に実施し、132件の回答を得た(回収率43.0%)。 このデータを用いた分析の結果、ネットワークのメンバー構成には経路依存性が存在すること。参加機関が長期的に変化しない状態として定義されるネットワークの固定性は参加機関が遠隔地にまたがるネットワークの広域性と負の相関を持つこと。参加機関の不足を補う取組みを阻害する要因としては所要の参加機関の所在が把握できないといった情報の非対称性よりも、追加的な参加機関の決定を困難にするプロジェクト自体の複雑性や不確実性の方が支配的であること等の事実発見を得た。また、組織間ネットワークによって取組まれるプロジェクトの成果が実用化に成功する確率は、参加メンバーの固定率に対してU字型の関係にあることが示された。この事実発見は、参加メンバーの固定性の高さが常にイノベーションに有利に作用するとは限らないことを示唆しているが、他方、メンバー構成には経路依存性が存在するため、境界が固定化する傾向は常に発生し得る。この点に注意を喚起するため、発見された現象を組織間ネットワークにおける「境界固定化の罠」と呼称した。
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