2017 Fiscal Year Research-status Report
Ex-post evaluation of business integrations through the pure holding company system in Japan
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17K03885
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
川本 真哉 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (60468874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 隆志 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (60437283)
河西 卓弥 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (20516992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 純粋持株会社 / 経営統合 / 事後パフォーマンス / リストラクチャリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、純粋持株会社の設立状況に関する包括的なデータセットの構築に着手した。従来、持株会社の設立実態については、アンケート等によるワンショットの情報に限定され、体系的なデータは提供されてこなかった。そこで、解禁以降の持株会社の設立案件に関するデータベースを購入するとともに、それを加工し、設立件数、業種、上場市場、形態(組織再編型、経営統合型)についての把握に努めた。 本データベースによって集計を行ったところ、まず、あくまで公表ベースではあるが、これまで1,000件程度の持株会社が設立されており(一部、事業持株会社案件を含む)、持株会社が経営統合や組織再編のツールとして根付いていることが明らかにされた。また、件数ベースは組織再編型が8割を超える一方で、金額ベースでは経営統合型が大きなウェイトを占めていることが確認された。業種ベースでは、組織再編型ではサービス業が、経営統合型では金融業が持株会社設立のドライバーになっていることが判明した。さらに、マーケット別の設立件数に目を向けると、上場企業の案件が大勢を占めるものの、未上場企業の設立も3割を超え、中小企業にまで活用の裾野が広がっていることが示された。 次いで、構築されたデータベースを用いて、持株会社活用の中でも特に近年増加する地域銀行の統合に焦点をあて、その統合動機と事後パフォーマンスについての検証を行った。分析の結果、以下の点が明らかにされた。第1に、健全性の劣る銀行ほど売り手として統合に参加する傾向にあることが観察された。第2に、事後パフォーマンスに関しては、合併方式に比べ効果は劣るものの、持株会社方式についてもダウンサイジングが進み、一定程度のパフォーマンス改善効果があることが確認された。第3に、域内統合と域間統合に分けて検証を行うと、後者の方で資産規模の縮小や収益性、健全性の改善が明確であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データセットの構築が進み、純粋持株会社の設立実態について把握ができたとともに、地域銀行を対象に持株会社方式による統合動機と事後パフォーマンスについての検証が行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、本年度にまとめた純粋持株会社の設立実態についての基礎的情報と、持株会社方式による地域銀行の統合動機と事後パフォーマンスに関する研究成果について、ディスカッションペーパーとして公表するとともに、学術雑誌に投稿することを予定している。 また、次年度には、持株会社方式による経営統合の事後評価に関して、非金融業をサンプルとした検証に着手する。具体的には、上場企業同士の経営統合案件を対象とし、統合案件と非統合案件、持株会社方式と合併方式の事後的な収益性、リストラクチャリング行動の差異について検証を試みる予定である。なお、統合案件のペアとなる非統合案件の選択に当たっては、可能な限り統合案件と事前の特性が近似した案件を抽出する必要があるため、傾向スコアマッチング(propensity score matching)などのテクニックを用いて、事後的なパフォーマンス改善効果に関する精緻な検証が可能となるよう意識する。
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Causes of Carryover |
天候不良(豪雪)により、予定されていた研究打ち合わせ(福井県立大学)が開催できず、研究分担者の旅費の執行ができなくなったため、未使用額が生じた。本年度に予定されていた研究打ち合わせを次年度に開催することにより、当該予算の執行を行う予定である。
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