2018 Fiscal Year Research-status Report
Ex-post evaluation of business integrations through the pure holding company system in Japan
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17K03885
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
川本 真哉 南山大学, 経済学部, 准教授 (60468874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 隆志 明治学院大学, 経済学部, 教授 (60437283)
河西 卓弥 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (20516992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 純粋持株会社 / 経営統合 / 事後パフォーマンス / リストラクチャリング / 事後評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に構築されたデータセットを用いて、純粋持株会社による経営統合が事後的なパフォーマンスに与えた影響について、非金融業と銀行業(特に地域銀行)のケースに分けて検証を行った。 まず、非金融業の経営統合の検証に関しては、従来型の合併方式による場合との違いに着目して検討した。分析の結果、次のような点が明らかにされた。第1に、統合前の業種、収益性、規模で近似させたコントロール企業と比較したところ、経営統合は事後的なパフォーマンスを実現しているとは判断できないという結果が得られた。第2に、期間の経過とともにパフォーマンスが改善しているか否かの検証(Jカーブ効果)についても、そうした効果は存在しないことが明らかとなった。第3に、統合企業間の対等性が事後的なパフォーマンスに与えた影響に関する検証からは、持株会社方式では統合企業間の規模が接近している案件ほど、そして対等性に配慮している案件ほど事後的なパフォーマンスの改善がなされていることが確認された。 次いで、本年度は前年度に着手していた持株会社による地域銀行の統合動機と事後パフォーマンスに関する検証についてのブラッシュアップにも取り組んだ。分析の結果、地域銀行の統合は市場支配力の強化を通じた株主価値最大化を動機とするとともに、政府の統合促進政策への反応や都道府県の経済環境からの影響も受けていることがわかった。また、事後のパフォーマンスについては、持株会社方式・合併方式ともに、十分なパフォーマンス改善効果を有していないことが示された。さらに、事後的なリストラクチャリング行動に関しては、合併方式に比べ組織の独立性が維持される持株会社方式の方がダウンサイジングへの取り組みは鈍いことが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度から進めていた地域銀行の検証に関して、ブラッシュアップがはかれたとともに、非金融業の経営統合を対象とした事後パフォーマンスの分析が行えたため。また、地域銀行の統合の検証については、査読誌への投稿を実現し、非金融業の検証に関してはワーキングペーパーとして公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、引き続き純粋持株会社化に関するデータセット(設立件数、業種、上場市場、設立形態など)の充実化に努める。 また、次年度には、持株会社による経営統合の事後評価の検証の一環として、持株会社体制を廃止した案件の把握とその要因についての分析に着手する。まず第1に、持株会社の設立形態を経営統合型と組織再編型に分類し、それぞれの廃止件数、廃止までの期間などの基礎的な情報を取集する。第2に、廃止要因に関して、経営統合によって設立された持株会社と組織再編によって設立された持株会社の差異に注意して分析する。具体的には、前者のケースでは、統合時の統合企業間の業種や企業規模の差異のあり方が、事後的な持株会社体制の継続性に影響を与えているとの仮説を立て検証を行う。後者に関しては、組織再編後の子会社数推移などのグループ再編の程度が同組織の継続性を規定するとの仮説を立て検証を行う。 なお、以上の研究成果については、ワーキングペーパーとして公表したのち、学術雑誌に投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
購入予定であったデータセット(株価データなど)の一部を学内資金によって賄うことが可能となったため。次年度使用額分については、データセットの更新(純粋持株会社化案件の把握など)、及び統計ソフトウェアの購入費用に充てる予定である。
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Remarks |
川本真哉・河西卓弥(2019)「純粋持株会社による経営統合の事後評価に関する実証分析」ワーキングペーパー(南山大学経営研究センター)、No.1802、pp.1-26.
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