2019 Fiscal Year Research-status Report
女性のリーダーシップ・スタイルと組織内育成についての実証研究
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17K03890
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
野村 浩子 淑徳大学, 人文学部, 教授 (30742134)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 女性リーダー / リーダーシップ / ジェンダーバイアス / 女性管理職 / 女性役員 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年2月にドイツにて、ドイツ大手企業に勤める女性エグゼクティブに対する定性調査を実施し「一皮むけた経験」(成長体験)についての聞き取りを行った。同時に企業における女性幹部登用策につき調査を行った。日本と同様ドイツにおいても、性別役割分業意識、仕事と育児の両立などが女性のキャリア形成の壁となっていた。また2016年に導入された女性監査役のクオータ(割当)制に関して、官公庁や弁護士などに制度導入の目的、意義、成果についてヒヤリング調査を行った。 8月には米国シリコンバレーにて、同様に大手企業の女性エグゼクティブに「一皮むけた経験」の定性調査を行った。実力主義で知られるシリコンバレーにおいても、女性幹部の前には未だジェンダー・バイアスの壁があることが分かった。企業各社は、日本をはるかに上回る女性管理職比率を達成しながらも、女性の幹部登用がまだ不十分であるとして積極的な格差是正策に取り組んでいた。 ドイツ、米国ともに女性活躍推進には「女性はリーダーに不向きである」といったアンコンシャス・バイアスを取り除くことが必要であるとの問題意識が高まっており、ダイバーシティ先進企業は、この対策に力を入れていた。これらの調査結果は、日本経済新聞女性面、日経電子版にて発表した。 2020年3月には、日米独の女性エグゼクティブへのインタビュー調査を軸にした書籍『女性リーダーが生まれるとき~「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成』(光文社新書)を刊行した。本書には、18年に実施した25社2500人調査「リーダーシップの性差とジェンダー・バイアス」の分析結果も収めた。3年間の研究成果を一般書として刊行することで、女性リーダー育成の課題を広く知ってもらうことに努めた。 また研究成果を論文「成果につながるリーダーシップ・スタイルの男女階層別比較」(野村浩子、川崎昌)としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の2017年は定量調査のための情報収集を行い、2年目の2018年は25社2500人に定量調査を実施して、その分析結果を4つの学会で発表した。3年目となる2019年はドイツ、米国で定性調査を行い、年度末3月に3年間の科研費調査の結果を書籍にまとめて刊行した。概ね計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
女性エグゼクティブの「一皮むけた経験」について、2017年度からの3カ年で日本、ドイツ、米国で定性調査を行った。本研究最終年となる2020年度は、同テーマで台湾の女性リーダーに定性調査を行う予定である。欧米とアジアの比較を通して、女性リーダーの成長経験、また女性リーダーを育む環境に何か違いがあるのかを探っていきたい。 また日本と海外の女性役員らの「一皮むけた経験」について、キャリア形成論、発達心理学なども踏まえて、さらに分析を深めて論考したい。 2018年度に行った25社2500人調査「リーダーシップの性差とジェンダーバイアス」のアンケート結果について、自由回答欄コメントの定性的分析も進めていきたい。 4年にわたる本研究での成果を、英語の論文として発表することも今後の課題である。
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Causes of Carryover |
女性リーダーの定性調査を、2020年度は台湾で行う予定である。そのための調査費用として使用することを計画している。
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