2020 Fiscal Year Research-status Report
M&A実施企業の組織マネジメント:トップの関与が研究開発活動にもたらす影響の解明
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17K03893
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
篠崎 香織 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (50362017)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | M&A / 研究開発活動 / トップマネジメント / 組織能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、分析対象企業の初年度(2003年度)から最新の第6次(2020年度)までの中期経営計画について、①研究開発活動にトップの意思がどのように反映されているのか、②研究開発テーマと買収の実施時期の関連、に注目した分析を行った。中期経営計画には今後3年間の経営方針が記載されており、そこにはトップの意思が反映されている。したがって、経営方針に沿って事業方針は設定され、事業方針に従って研究開発テーマが決定すると考えられる。 当該企業の事業方針は経営方針に基づいて設定されており、事業方針に沿って研究開発の重点テーマが決められている。2002年度より新規参入した医療用モニター事業は、中期経営計画の初年度から6年間強化すべき項目に挙がっており、その後の約6年は参入を果たした手術室分野の深化が重点項目になっていた。 当該企業はこれまで医療分野に関する買収を4件実施している。これらは事業方針に基づいて活動している中で相手先より打診のあった案件で、自ら相手を探索、選択したものではない。そのため、中期経営計画が出た2003年度以降、早々に実施した買収はない。また、強化分野として手術室・内視鏡用モニターの取り組みが掲げられたのは、第二次中期経営計画(2006年度)からであるが、当該企業が自社ブランドとして手術室・内視鏡用モニターの開発に本格参入したのは2016年に実施した買収以降である。 当該企業の経営方針も事業方針も自社に必要なことを自前で行うことを前提としている。そのため事業方針に沿う買収は実施するが、門外漢の分野を含む買収はしない。必要なもののみを取り込む買収の実施は、当該企業の方針に基づいて、当該企業と被買収主体の技術や能力を活用し研究開発を進める体制を可能にしている。この分析結果は、今後の買収実施企業の研究開発活動の参考になるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、インタビュー対象企業に出向いての調査はできなかったが、公表資料をさらに収集し、これまで収集してきたデータと突き合わせて分析することができた。また、そのうえで不明な点や補足が必要な点の情報を研究協力企業の担当者から得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、研究対象企業に関して以下の流れで研究を進める。 1.年度ごとの研究開発テーマの整理(特に2016年度以降。有価証券報告書、中期経営計画等を参照)、2.研究開発の重点テーマと発明者の関連性の整理(特許データについて、買収対象主体も含めた発明者の出自に注目)、3.社内技術の柔軟な活用状況の把握と整理(モニター開発、および手術室内映像システム構築を通じて実施のあった部署間、組織間連携の事例)、4.1から3のデータを用いて、M&A実施企業の組織マネジメントとして、組織運営と資源活用の両面から、本研究対象企業の特徴的な点を明らかにする。また、先行研究をもとに一般化できることを命題として提示する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症対策のため研究対象企業に出向いた調査ができず、また学内業務に時間を費やし研究が進めにくかったことや、学会が中止、延期、オンライン開催になり旅費の支出がなくなったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 2021年度は、研究対象企業の特許データを追加購入及び、新規購入する。また、論文の英文校閲、国内外の学会への参加費等に助成金を使用する。
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Research Products
(2 results)