2018 Fiscal Year Research-status Report
Management Based on Caring: Research on the Significance and Current Situation of Business for Society-type Business
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17K03894
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
潜道 文子 拓殖大学, 商学部, 教授 (60277754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | B4S型ビジネス / ケアの倫理 / コミュニティ・キャピタル / 地方創生 / アクター・ネットワーク理論 / 翻訳 / 効率と公正 / デザイン思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、組織に埋め込まれた倫理的価値観をもってステイクホルダーに対応するという人間中心の、関係性や互酬性を重視する「ケアの倫理」を基盤としたマネジメントについて、特に、地方創生活動分野でソーシャル・イノベーションに成功している地域で活躍するソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)の活動を中心に考察した。さらに、この社会起業家たちの活動によって、「コミュニティ・キャピタル」という、地方創生が効率的かつ成功裏に導かれる人的ネットワーク(関係性)が構築されることを示した。また、地方創生活動におけるコミュニティ・キャピタルの存在と、「効率」や「公正」という倫理的尺度との関係性について考察した。 加えて、ケアの倫理に基づいた事業を通じて、新たな事業や製品を創出している企業の事例研究を行い、アクター・ネットワーク理論(ANT)などの理論面からの考察を行った。結果として、CSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)等とは異なるサステナブルなビジネスモデルの存在や、社会における企業の役割の変化、日本人的価値観や感覚が企業経営に生かされる経営戦略の存在の可能性、その日本的モデルが、グローバルなビジネスモデルとしての適応する可能性について示唆を得た。 さらに、今年度の研究からは、地域の社会的イノベーションの成功事例を検討することによって、人間(ユーザー)中心の思考方法である、「デザイン思考」が果たす役割の重要性を指摘した。つまり、デザイン思考の発想により、地域の課題の見方を再検討し、また、住民(ユーザー)が豊かで幸せな生活を送れる環境を整備することの重要性を明らかにした。 なお、これらの研究成果は、国際学会などでの報告を中心に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、企業が「他者を倫理的に扱う」ことの重要性を「ケアの倫理」の視点から考察し、企業が「社会のためのビジネス(B4S)」の原則から逸脱することなく、企業の社会における役割を果たし、かつ、企業として利益を創出するためにはどのような要因が必要であるのかを明らかにしようとしている。 今年度は、B4S型ビジネスとして社会的企業の事例を取り上げ、特に、地方創生活動に携わる社会的企業の社会における役割を考察した。 また、サステナブルな企業経営を実践し、かつ、経済的利益の創出を実現している企業へのインタビュー調査により、一般的なCSR経営(企業の社会的責任経営)とは異なる、新たなビジネスモデルの存在を明らかにするべく、今年度、研究を行った。 さらに、本研究では、B4S型ビジネスを、働く人々の視点から考察することを計画しているが、本件についても、すでに、インタビュー調査を進めており、来年度、学会報告や論文の形で成果発表を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、Business for Society型ビジネスの一例として、まず、これまで研究してきた地方創生の成功事例において、創生プロジェクトに関わる人々のフロー体験とその成果との関係について検討する。また、仕事でフローを創出するマネジメントおよび要因について探る。さらに、「コミュニティ・キャピタル」の存在とフロー体験との関係についても考察する。 次に、グローバル戦略に基づいて急激に業績を伸ばしている企業において、その成功要因のひとつが、働く人々(従業員)の楽しさや成長感、達成感のようなフロー体験であるという仮説のもと、従業員へのインタビュー調査を実施し、仮説を検証する予定である。また、人材の育成および人的資源戦略の視点から、フロー体験とケアの倫理との関係を考察する。また、仕事における人の成長と成果を、複線径路・等至性アプローチなどの理論を活用して分析する。 さらに、CSRやCSVとは異なる、ケアの倫理に基づいたサステナブルな企業経営の事例を検討し、なぜ、現在のようなビジネススタイルをとるようになったのか、その転機となったと考えられる出来事における意思決定の際の倫理性と、そこから生まれた新しいプロジェクトと成功の要因と考えられる「巻き込む力」、およびそれらの活動をビジネスにつなげるために必要となる要因について考察する。 当初、本研究では、企業へのアンケート調査を計画していたが、個別企業へのインタビュー調査を複数回する機会に恵まれ、また、個別企業での従業員へのアンケート調査をすることは難しい状況であるため、企業へのインタビュー調査を中心に事例研究を行っていく予定である。ただし、サステナブルな事業活動を行う企業が、その倫理性をビジネスにつなげるための要因を明らかにするため、ある企業の商品のコアなファンへのアンケート調査の実施を計画している。
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Causes of Carryover |
今年度は、成果報告として学会報告を中心に行ったが、日本で開催された国際学会大会に参加したことや、当初、予定していた、アンケート調査ではなく、インタビュー調査を中心に研究を行ったことによって、次年度使用額が生じた。 来年度は、より積極的に、海外での調査を行い、また、海外で開催される国際学会に参加する予定である。
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Research Products
(5 results)