2020 Fiscal Year Research-status Report
企業統治の質と企業不祥事の定量分析:有効なマッチングとガバナンス間の補完性
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17K03896
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
青木 英孝 中央大学, 総合政策学部, 教授 (90318759)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 企業不祥事 / 社外取締役 / 社外監査役 / モニタリング / 経営者インセンティブ / ストック・オプション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コーポレート・ガバナンスと企業不祥事の因果関係を統計的に分析し、実証証拠を提供することで学術的に貢献することにあった。具体的には、社外取締役や監査役によるモニタリング機能の強化、およびストック・オプション導入などの経営者インセンティブの強化が、企業不祥事の発生確率を引き下げるか否かを検証することが課題である。 令和2年度は、経営者インセンティブと企業不祥事の関係についての分析を進めた。具体的には、ストック・オプション制度の導入や経営者による株式保有が、粉飾決算などの会計不正の発生確率を上昇させるか否かを、日本の上場企業をサンプルとして独自に構築したデータベースを用いて検証した。その結果、経営者インセンティブの強化は、会計不正の発生確率を高めるという意味で、逆機能のリスクを包含することが確認された。つまり、経営者インセンティブの強化は、ストック・オプションの導入による積極的なリスクテイクや、あるいは経営者自身が株主になることで株主との利害相反が緩和されるという、いわゆるアラインメント効果といった正の影響だけでなく、会計不正の誘発という負の影響も併せもつことがわかった。この事実発見は、企業のガバナンス改革においては、単純に経営者インセンティブを強化すればよいというものではないことを示している。 なお、分析の結果は、学会(国際戦略経営研究学会・第13回年次大会・研究発表大会)で報告を行った。参加者からは、経営者インセンティブ単独でなく、経営者インセンティブが取締役会の特性や株式所有構造といったその他のガバナンス特性と、どのような相互作用を通じて企業不祥事の発生確率に影響を与えるのかといった分析視角について、有意義なコメントを頂戴することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者が学内行政職(学部長)に就任したため業務多忙であった。通常の学部長としての業務に加えて、新型コロナ感染症の影響もあり、自身のオンライン授業の準備だけでなく、学部としてのオンライン授業実施に関する環境整備等に多くの時間を費やすこととなった。また、新型コロナ感染症の影響で、学生アルバイトの雇用が困難になったり、予定していた国際学会への参加を取りやめるなどしたために、研究に大幅な遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度に当たる令和3年度は、これまでの分析結果を学術論文に仕上げることが最大の目標である。社外取締役や監査役によるモニタリングの質と企業不祥事の関係、および、ストック・オプションなどの経営者インセンティブと不祥事の関係については、既に学会や研究会での報告実績があるため、参加者から頂戴したコメントを参考にしつつ論文の執筆を進める予定である。また、適宜、学会等で研究発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で、予定していた学会への不参加や学生のアルバイト雇用が困難になったため次年度使用額が生じた。本年度は、学会参加やアルバイト雇用などに研究資金を使用し、これまでの研究成果を論文に仕上げる予定である。
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