2020 Fiscal Year Annual Research Report
Corporate pensions in the era of declining birthrate and increasing elderly population
Project/Area Number |
17K03898
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐々木 隆文 中央大学, 総合政策学部, 教授 (10453078)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 退職給付債務 / 退職給付制度 / 株式の資本コスト / 財務レバレッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はデータをアップデートした上で実証分析を行い、論文のドラフトを執筆した。 実証分析は1)インプライド資本コストの定義、2)内生性への対処、3)レバレッジの定義に留意しつつ進めた。1)については先行研究でスタンダードな手法となりつつある4つの資本コストモデルによって算出された資本コストの平均値をメインに分析を行ったが、日本企業では長期予想データが利用可能な企業数が少ないため、長期予想を必要としないモデルのみの平均値を用いた分析も併用した。2)についてはメインの説明変数について操作変数法による分析を行うとともに、内生性の可能性があるコントロール変数の加除による影響も検証した。3)については退職給付債務のデュレーションが長いことを踏まえ、長期金融負債との比較をメインで行ったが他の定義による金融負債を用いた検証も行った。 分析の結果、退職給付債務は株式の資本コストを高める傾向があるものの、その影響は金融負債よりも小さくなることが分かった。また、両者の係数の際は従業員の勤続変数が長い企業ほど大きくなった。これらの結果は人的資本提供者である従業員が人的資本の価値を守る結果、退職給付債務がソフトな負債になっている可能性を示唆している。 本稿の学術的貢献は下記のようにまとめられる。第1に確定給付型の退職給付制度に関する先行研究では人事上のメリットと財務上のデメリットが示されているが本研究の結果は後者が限定的であることを示唆している。第2に負債の種類により、財務レバレッジの影響が異なってくることを示した。第3に先行研究では確定給付型の退職給付制度が研究開発投資を促すことが示されているが、本研究の結果は株式資本コストの上昇が抑えられる形で投資資金の一部がまかなえることが研究開発投資につながっている可能性を示唆している。 今後は準備が整い次第、学術雑誌に投稿する予定である。
|