2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K03900
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
風間 信隆 明治大学, 商学部, 専任教授 (60130803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
H・R Bungsche 関西学院大学, 国際学部, 教授 (10434903)
清水 一之 明治大学, 経営学部, 専任准教授 (80515081)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 資本主義の再構築 / 利害関係者資本主義 / 多元的企業統治モデル / 利害関係者(ステークホルダー) / 格差・不平等の拡大 / 企業ミッション / 利害一元的企業統治モデル / 企業倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで企業統治(corporate governance)の研究は米国・英国をはじめアングロサクソン諸国を中心とする株主利害一元的企業統治モデルとドイツをはじめとする大陸欧州諸国を中心とするステークホルダー重視の利害多元的企業統治モデルとがせめぎあってきた。しかし、1990年代以降の経済のグローバル化・金融化の影響の下でドイツを中心としたEU域内におて「株主価値重視経営」への転換が声高に叫ばれてきた。本研究はこの二つの企業統治モデルの本質を前者の株主価値一元的企業統治の前提が、1)株主は会社に対する支配権を有するべきである,2)経営者は株主利益のみに奉仕する受託者責任(the fiduciary duty)を有している,3)企業の目的は株主のために利潤を最大化することにあるのに対して、後者の利害多元的企業統治モデが,1)全ての利害関係者が自分に影響を及ぼす会社の決定には参加する権利がある,2)経営者は全ての利害関係者の利害に奉仕する受託者責任を有している,3)企業の目的は株主だけの利益ではなく,全ての利益の促進であるべきであるとする命題のもとで区別されるものであり、こうした多元的企業統治モデルが普遍的妥当性を有することを明らかにしてきた。ところが2019年8月,米国主要企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルは,これまでの「株主優先主義」を見直し,会社が幅広い利害関係者に配慮した経営を行うことを推奨する声明を発表し、会社の目的が株主だけではなく,顧客,従業員,取引先,地域社会といった多様な利害関係者に配慮する必要があることを強調し,「会社は株主のために存在する」という伝統的な考え方は今日の企業社会の実態にそぐわなくなったとして,これまでの「株主価値重視」の企業統治の見直しを表明するに至った。この点で世界的潮流として格差・不平等の拡大の下で多元的企業統治モデルの実践的意義が高まっていることを明らかにしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,2019年度の予算を使って、2020年3月にドイツの訪問調査を行うことでヒアリング対象との調整も済ませ,航空券ホテル予約,鉄道パスも購入した後で,急遽,新型コロナウィルス感染拡大の影響により中止せざるを得なかった。 本研究は当初は2020年度をもって終了することになっていたが、コロナの影響により2021年度の研究延長を承認頂いた。しかし,その後、2020年度もコロナ禍の影響により本研究についても停滞を余儀なくされてきた。しかし本研究の研究代表者及び研究分担者は後述されるような研究業績において示されているような研究成果をあげることで日本の学術分野の八手に寄与できたと自負している。 2021年3月末に研究代表者である風間が共同研究者であるホルガー・ブングシェ教授の関西学院大学の西宮上ケ原キャンパスの研究室を訪ねて2021年度の共同研究の進め方について話し合いを行った。これまでの研究計画では本研究予算を用いたドイツ調査を行うことを明記していたが、予算の制約上、本研究費では難しいことも分かったため、共同研究の進め方に一層の工夫が求められていることも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,残りの研究費の最も効率的な使用法を考えながら,当初の研究目的と成果の達成のために,3年前の原点にもう一度立ち返り,研究チーム内でもう一度研究計画を点検し,もっとも効果的に研究成果を上げられると思われる計画に基づいて研究を強力に推進する。この点で、研究チームで別の予算的措置を獲得することで、本研究で不可欠としてきたドイツへの訪問・ヒアリング調査を研究チームで行う予定である。しかし、これはコロナの収束が見えない限り実現できないため、、それとは異なるアプローチでインターネットを活用した情報検索と情報収集、さらには国内の自動車メーカーのヒアリング調査も踏まえた研究成果を目指すことにしたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたドイツ訪問調査が頃名の影響で実現できなかったために2021年度へ支出を繰り延べる。その使途については、当研究テーマに関わるドイツ文献購入費、日本との比較という視点からドイツの状況の理解を促進するために九州地区の自動車メーカーとロボットメーカーへのヒアリングに充当する。なお、研究分担者である関西学院大学のホルガー・ブングシェ教授は残りの研究費を使ったドイツ調査を予定している。
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