2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K03921
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
辺 成祐 近畿大学, 経営学部, 講師 (40737467)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 工程間調整 / 組織間調整 / 調整能力 / プロセス産業 / 鉄鋼産業 / 公差管理 / 累積公差 / 技術知識の発展段階 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目の2019年度は、これまでの実地調査を踏まえて、研究課題に答えるための、より深い資料収集、実地調査を行った。具体的には、企業の工場・事業部等の実地調査を、鉄鋼産業8回、自動車産業3回、醸造産業3回行った。さらに、以上の実地調査などの知見を研究成果としてまとめつつ、調査成果の発信を積極的に行った。具体的な成果としては、雑誌論文2本を出版し、学会報告6回(国際学会報告2回)を行った。 2019年度も、おおむね実施計画通りの成果が得られた。技術導入した新興国企業(韓国鉄鋼メーカー)を対象に調査を実施し、工程間、組織間の調整能力を構築していくプロセス(本研究の第2の課題)をさらに明らかにし、日本企業(鉄鋼メーカー)との比較分析を行った。特に、工程間、組織間の調整を公差管理の面から分析した。製品品質情報を工程間で共有し、加工・処理の微調整を行うことで、高品質の製品を生産する日本企業と比べ、工程間で公差情報の共有が円滑に行われず、高品質製品の生産に苦労する新興国企業の対比が明らかになった。公差管理を教科書通り範囲で管理する新興国企業と、一点管理に近い形でマネジメントする日本企業を比較することで、前者に累積公差という課題が存在することが分かった。 また、日本企業の場合、主にベテラン人材を集めた組織体制で工程間調整を行うことに対し、新興国企業は、ITシステムを整備し、製品品質情報を共有しようとしていた。工程間、組織間の調整を組織で行う場合と、ITシステムで行う場合の効果面での比較は、今後、本研究を進めるうえで重要なポイントになることが分かった。 以上の調査の成果を踏まえて、技術知識の発展段階を論じた既存研究に、工程間調整能力の概念を取り入れた研究をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展し、2020年度にもさらに体系的な研究を行う予定である。 第一点目に、当初計画した実地調査は、おおむね計画通りに行った。さらに、まとめた研究成果に基づいて企業の役員、エンジニアと意見交換をする機会をつくることで、フォローアップ調査も行うことができた。 第二点目に、工程間、組織間調整の負荷と企業の調整能力とのアンバランスを解消していくプロセスに関して、組織体制の整備とITシステムの構築といった選択肢が明確に見え、これに従って各事例をまとめ、国内、国際学会で発表し、コメントなどを研究に反映している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究4年目の2020年度からは、これまでの研究成果を確かめる作業を進める同時に、本研究の第3課題を明らかにする作業に集中する。具体的には、「工程間、組織間の調整能力と生産現場のパフォーマンスの対応関係を明らかにすること」である。この課題に取り組むために、2つの概念を整理する必要がある。 第一点目に、工程間、組織間の調整能力の‘高低’を規定することである。調整能力の不在、不足から高水準に至るまでの段階論などのアプローチが必要になる。 第二点目に、生産現場のパフォーマンスの測定である。これに関しては、生産現場の競争力の指標である品質、コスト(製造原価)、納期(リードタイム)の概念を使うことにする。 一方、新型コロナウイルスの関係で、2020年度前半には、実地調査を積極的に行うことに困難が予想される。したがって、2020年度後半の実地調査の準備として、以上の2つの概念を理論的に整理し、後半の実地調査で利用する。具体的には、鉄鋼産業のポスコ、日本製鉄、化学産業のロッテケミカル、ダイセルを訪問し、ヒアリング調査を行う。調査の焦点は、工程間、組織間の調整方法とその能力構築プロセス、そして生産現場のパフォーマンスとの対応関係を明らかにすることである。
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Causes of Carryover |
おおむね計画通り執行できたが、端数が発生した。2020年度に使い切る予定である。
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