2017 Fiscal Year Research-status Report
中間人材に注目した新しい地域活性化人材モデルの構築
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17K03925
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
白肌 邦生 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60550225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 資源統合 / 正当化 / 地域おこし協力隊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,地方地域の活性化という我が国の重要課題に対し,その地域に住みながら外部の視点で地域を捉える人材を「中間人材」とし,その効果的な活用・育成の基盤となる新しい地域活性化人材モデルを構築することを目的とするものである.平成29年度は,地域活性化の成功事例に関する文献調査および先行的な聞き取り調査を実施した. 結果,文献調査からでは必ずしも中間人材の活動を把握する上で十分ではないこと,そして新たに中間人材の旧活動地と現在の活動地の地理的親和性情報も分析する上で重要であることを見出した.今後は総務省が公開している様々な属性データと関連付けながら,資源統合過程を分析する必要があると考えている. 加えて,実際に地域おこし協力隊(当時)に協力を得,鳥獣害対策をミッションとし2年間協力隊として活動した中での,知識や能力の正当化過程について聞き取りをした.着任当初,担当地域はもとより所属自治体の関係者からも可能性について疑念を抱かれていた中で,自分自身の中核価値を見出し・発揮し,如何に他者にその有効性を正当化したかについて聞く中で,中間人材の行動モデルに関わる次の着眼点を構築するに至った.1. 交流の頻度ではなく密度が資源統合の可能性を高める.2. 公共サービスエートスに基づく行動が地域における中間人材の正当性を高める.3. 中間人材は地域でリスクを負いながら活動しているアクターを同定し,その資源と統合することが価値提案形成において効果的である. こうした着想を洗練させるべく,年度終盤でウェルビーイング志向のサービスに関する研究会を中国・復旦大学と実施し成果報告・意見交換をした.他にも国際会議で公共サービスイノベーションに関するワークショップに招待され,日本の地域の現状及び人材としての中間人材の特有さについても議論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,初年度に地域人材の活動を詳細記述している特定の文献を分析し,続く年度に行う調査の観点を整理することとしていた.分析からは,必ずしも当該文献が中間人材の活動を把握する上で十分ではないことに気づき,また新たに中間人材の旧活動地と現在の活動地の地理的親和性情報も分析する上で重要であることを見出した.今後は総務省が公開している様々な属性データと関連付けることを含め,次年度は前年度の発展というかたちで文献調査を実施し,中間人材の活動分析についてより深い分析を行う予定である.なお,次年度で計画をしていた調査に関しては先取りとして試行的インタビューを地域おこし協力隊にできたことは計画以上の進捗といえる.非構造化でライフヒストリーの要領で聞き取り調査をすることができ,中間人材の資源統合過程や知識の正当化について多面的な着想を得ることができた.今後は人的ネットワークを通じてスノーボール式に調査対象を増やしていくことで,着想からの仮説構築および検証に向けた準備を整えていきたい.さらに年度後半では国際研究活動の一環で,ウェルビーイング志向のサービス研究の重要トピックとして中間人材による地域サービスおよび活性化を他国の研究者と話題共有・意見交換できたことは今後の研究にとって重要であり,以上の観点から本研究はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得た着想を更に洗練させていく必要がある.このために,全国的な中間人材の活動の分析について,活動前後の地理的親和性情報も含めたうえで属性情報として定義し,包括的に分析できるデータセットの構築を進めたい.さらに,次年度は,スノーボール方式で新しい中間人材の協力を得て聞き取り調査をすることで,資源の統合スタイル及び自分自身の知識・スキルの他者への正当化プロセスを記述する. このような,前年度タスクの継続に加え,ファシリテータ機能要件の導出を実施する.現在進行形で活動している事例を資料調査やインタビューの結果から抽出し,McColl-Kennedyらの価値共創活動実践スタイル研究を地域活性化の文脈に応用し現場観察する.そしてどのような要因が価値共創を支援・促進(ファシリテート)しているかについて,中間人材個人でできることと,集団でできることを整理し,ファシリテータ機能要件を見出す.この過程でサービススケープ研究を活用し,場への認識の変化についても考察する. そして最終年度では,それまでのタスクの知見を統合し地域活性化人材モデルを構築したうえで,アクションリサーチを実施することを計画している.そのための準備として,地域おこし協力隊や現場に研究協力への理解,モデル妥当性検証のための要件構築を進める予定である.
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Causes of Carryover |
人件費として準備していたが,当初予定していた人材が当該年度において参画ができない事態が発生したために,そのまま繰り越しをする.なお,本年度においては参画可能であるため,計画的な使用ができると考えている.
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Research Products
(3 results)