2018 Fiscal Year Research-status Report
日本型経営生産システムの歴史的位相の評価:1980年代以降の変化とその含意
Project/Area Number |
17K03927
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安保 哲夫 神戸大学, 経済経営研究所, リサーチフェロー (90013028)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 隆広 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (60320272)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 「適用・適応のハイブリッド」の柔軟性 / 巨大市場の規模の利益 / 新興地域に対応した現地経営生産戦略 / 「中間的企業」と合同の現地適応型製品生産戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)現地調査 日本企業や関係企業の内外工場現場を調査・分析した。A.北米のトヨタ、ホンダ工場調査 平成30年6月。安保哲夫、佐藤隆広(研究分担者)などで実施。この再調査の成果の一つは、先進国進出の日系製造企業の新局面における対応戦略として、現地適応面で柔軟な選択をして、当初からの日本型システムの適用重視方式に一定の修正を加えていた事実が認められた点である。日本の自動車企業が、米国市場で大きな成功を収めたについては日本式の高い品質・効率が大きく寄与した。しかし同時に、米国の経営環境に合わない諸要素には、一定の範囲内で米式を導入し適切な「適用・適応のハイブリッド」を追求した。その一例は、日本式で重要な多能工養成のジョブローテーションが、労働負荷を均すエルゴノミクス的な配置転に代えたことである。これは、一方では日本式の強みを減殺するが、なお残る高品質・高コストパフォーマンスの強みは巨大市場規模の下では有効であった。B.マレーシャ・台灣調査 平成30年8-9月、平成31年3月。安保哲夫が、所属する日本多国籍企業研究グループの調査活動(平成30-32年度科研費「基盤研究B」(代表者:中京大学教授銭佑錫)に参加した。その成果の一部を、本研究の趣旨に即して挙げれば、東アジア新興地域における日本型経営生産システム移転の活動が、1990年代後半以後、中国やインドなどで十分な成果を上げにくくなってきている実態の解明に有益であった点である。これら新興地域の主要市場であるボリュームゾーン・BoP市場に対応しうる戦略は、現状では、日系大企業が得意とする中・大型の高級ブランド製品・生産ではなく、日系・現地系の「中間的企業」と合同の現地適応型製品・生産の追求であろう。インドのトヨタ-スズキ、中国のホンダ2輪-新大洲、マレーシャのトヨタ-ダイハツ、など。 2)各種研究会、学会での発表活動 3)論文、著書の刊行
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以上の研究実績の概要にみられるように、日本企業による日本型経営生産システムの海外移転、現地生産活動は、1990年代後半以降の第2ラウンドにおいて一つの大きな転換点を迎えていた。本研究プロジェクは、これら日本多国籍製造企業、ひいては日本製造業全体が、歴史的大転換期である第2ラウンドにおいて直面している海外戦略について、「適応」面からのアプローチに特に注目しつつ、新興・先進両地域を比較して調査研究を続けてきている。 その調査研究計画が、本年度は、関連の共同研究グループとも協力して、先進国の代表である北米とアジア新興地域の主要国であるマレーシャ、台灣をしっかり調査することができ、かつ予想以上に重要な知見、見通しが得られつつあると確信できている。すなわち、この第2ラウンドの焦点は、その遅れて出発した日本多国籍企業の初期的な本国親会社主導の日本式「適用」優先方式が現地の社会経営環境への対応において一定の限界がみえ始めた点である。それはまず、この頃から特に中国やインドなど世界経済を主導する巨大新興地域の主要市場であるボリュームゾーン・BoP市場に対応しうる新たな戦略の問題として現れた。そこでは、日系大企業が得意とする中・大型の高級ブランド製品・生産では十分な成果を上げることができなくなった。しかも第2ラウンドの時期には、北米など日本主要製造企業の主戦場においても、「適用」第一だけでは対応の難しい状況が表れていた。 本年度の調査研究では、これら日本多国籍製造企業が第2ラウンドにおいて直面している海外戦略について、「適応」面からのアプローチに特に注目しつつ、新興・先進両地域を比較して調査研究を遂行し、いくつかの有益な示唆が得られたのである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクト最後の今年度においては、これまでと同様に関連の共同研究グループとも協力して、さらに中国や東南アジアのタイ、インドネシア、場合によっては中東欧まで調査範囲を加えて、より具体的でより明確な結論、見通しを得るべく、活動を進めたい。
|
Research Products
(4 results)