2017 Fiscal Year Research-status Report
自動車産業における中間財メーカー視点の成長戦略のパターン―独立系企業を中心に―
Project/Area Number |
17K03943
|
Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
李 在鎬 広島市立大学, 国際学部, 教授 (40342133)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩地 洋 京都大学, 経済学研究科, 教授 (60215944)
富山 栄子 事業創造大学院大学, 事業創造研究科, 教授 (40449426)
平野 実 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (00405507)
菊池 航 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (00710724)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 自動車部品メーカー / 成長戦略 / 顧客 / 製品 / コンピタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の平成29年度の主な研究実施計画は文献サーベイ、データの収集に加え、西日本の独立系部品メーカーに対して実地調査を行い、顧客、製品、コアコンピタンスという3軸からなるサプライヤー視点の成長戦略の枠組みを検証することであった。 そこで、李は自動車工場などの設備の部品メーカーである中小サプライヤーが外部から人材を獲得し、設計能力を構築したことによって、高付加価値製品の開発ができるようになったことや、海外拠点の多面的活用により量質両面において成長を遂げている事例を分析し、海外発表を行った。また、李は設備事業や医療、自動車部品事業などを幅広く展開しているオムロンの国際戦略について明らかにした。李・平野(2017)は、プレス部品と金型を開発し、国内外の自動車メーカーに提供している独立中堅サプライヤーと、韓国現地企業の間で30年間続いてきた合弁事業の成功要因を分析した。同研究報告は、学会よりBest Paper賞を受賞した。 塩地(2017)は、自動車産業における部品国産化ライフサイクルと自動車リサイクルプロセスにおける国際分業という独創的な研究テーマについて分析し、国内外の学会で研究報告を行った。 菊池(2017)は、オート・アライアンス・タイランドの事例を精査し、マツダの海外拠点における部品調達の構図について明らかにした。また、マツダ・三菱自・トヨタの国内調達の仕組みを分析し、系列に依存しない部品調達の柔軟性とリスクを析出した。 富山(2018)は、マーケティングの観点から、ロシア市場における日本のメーカーの新車及び中古車販売戦略を明らかにしている。また、李・塩地は、当該産業の海外ににおけるグリーンシフト(エコカーへの移行)の動向を調べるため、ノルウェーとアイスランドの日系メーカーの販売拠点を実地調査した。そこで得られた知見を平成30年度中に、国際学会で発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同研究は、現在急速に進行中の、グリーンシフト(エコカーへの市場移行)とスマートシフト(自律走行技術の開発とその市場導入)といった2つの技術環境の変動の中で、サプライヤーが現在主に行っている系列取引あるいは長期取引を含むバリューネットワークに安住せず、イノベーションのリスクを回避しながら、新たな成長の基盤を見出すにはどうしたらいいのかについて主眼をおいて、検討を進めてきた。 よって、同研究を取り巻く環境そのものも、いつになく、複雑で、予見可能性が低いと考えられる。そこで、各研究担当者は、当初の研究計画に依拠しつつも、詳細な研究の遂行においては、様々な角度から、柔軟な姿勢で取り組んできており、いずれも新規性の高い研究成果を出してきたと認められる。ただし、一方で、それぞれの研究成果を統合するプロセスにおいては、当初の計画に照らし、若干遅れをとっているとみている。 以上を鑑み、研究担当者は、同研究が概ね順調に進展しているという評価に相応しいと認識している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度における研究実施計画における重点課題は、体系的な調査である。 当初は、国内の部品メーカーを対象とした設問による多変量解析と海外生産拠点の実地調査をあげていた。 ただし、予算や時間の制約を考慮にいれつつ、また中間財メーカーが、現在先行市場において進行中のグリーンシフトやスマートシフトという技術環境の動向を、如何に捉えており、それに適合する形で、顧客の範囲、製品の範囲、コアコンピタンスのあるべき姿を如何に描いているのかを、起動的に把握する必要がでてきたことから、新興国などへの探索的な実地調査と取材に重きをおきながら進める予定である。 また、各研究担当者の研究成果を統合し、最終報告書の完成度を高めることを心かけたい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、旅費と人件費・謝金における当初の予算の策定と実際執行した金額との食い違いによるものである。特に、昨年度まで1~2ヶ月に1社のペースで行われてきた李・塩地・菊池が参加している自動車部品企業見学会が外部の要因により、数回も見送られてきた点が大きかったと分析している。今後は、研究協力者の外部の幹事(自動車部品工業協会)により行われてきた部品企業の見学先の手配を、当研究担当者が行うことによって、平成29年度に未開催となった分までは取り戻せないものの、見学会を再度軌道に乗せることが求められる。また、人件費・謝金においては、英文の論文などを執筆する際、校正などの使途に、執行していく必要がある。 また、平成30年度は、研究内容の調整と研究成果の統合のため、研究担当者同士での研究会や打ち合わせを増やす必要性がある。特に、李・平野は共同研究をさらに深め、その成果を平成30年度中に国内学会で連名で発表する計画を立てているため、研究の打ち合わせをより頻繁に行う予定である。 以上の理由から、平成30年度には、次年度使用額と翌年度請求する助成金の合計額を適切に執行することが可能である。
|
Research Products
(21 results)