2018 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の中国・タイ中間層市場開拓の戦略:本社・現地法人の組織学習を中心にして
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17K03947
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
李 新建 東洋学園大学, 東洋学園大学現代経営学部, 教授 (30433684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
申 美花 茨城キリスト教大学, 経営学部, 教授 (00543555)
今口 忠政 茨城キリスト教大学, 経営学部, 教授 (40102941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新興国市場 / グローバル競争戦略 / 組織学習 / 経営資源の国際移転 / 信頼構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、平成29年度に継続して、グローバル競争戦略・新興国市場戦略・イノベーション・組織学習・組織能力・経営資源の国際移転・信頼構築などに関する理論文献を検討し、本研究プロジェクトのフレームワークの構築・精緻化に取り組んでいた。研究代表者と研究分担者は日本国内に複数の研究学会及びコンサルティング会社主催のセミナーに参加し、日本企業の新興国ビジネスに関する調査研究の情報収集に努めた。研究代表者、研究分担者および研究協力者はタイ及び中国に、日系企業及びタイ・中国の現地企業にインタビュー調査を実施した。タイには、バンコクを中心として日系企業3社(製造業2社、サービス業1社)及びタイ現地企業1社(卸売り・小売業)にインタビュー調査を行った。中国には上海を中心として日系企業8社(製造業6社、サービス業2社)及び中国現地企業1社(サービス業)にインタビュー調査を行った。調査対象となった日系企業は殆ど中国及びタイにおいて、ハイエンド市場セグメントをターゲットとして取り組んでいるが、中間価格ないし低価格市場セグメントは当分重要なターゲットと見なされてないことが分かった。一方で、中国企業は低価格・中間価格セグメントにとどまらず、高価格高性能セグメントにも進出しており、グローバル競争力は急伸していることが現地でのフィールド調査を通じて深く理解できた。このことに関しては、研究代表者と研究分担者が、中国の代表的な企業である海爾グループをケースとして取り上げ,そのグローバル競争力の向上の源泉を考察し、その成果は、東洋学園大学『現代経営研究』第5巻第2号に掲載されている。本稿では、海爾の競争優位の源泉は低価格と適正品質などの製品上の特徴より,中国の事情に根付いた持続的且つダイナミックな組織能力の進化にあることを強調している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は計画通りにタイと中国の現地調査を実施し、事例研究を行った。本研究の理論仮説の構築を試み、次年度に予定されるアンケート調査の質問項目も検討した。ただし、学術的には先進国多国籍企業の新興国市場中間価格ないし低価格セグメントの開拓は重要な研究テーマとして、多くの学者の注目を集めているが、現実にはどれほどの日本企業がそれに本格的に取り組んでいるかを更なるアンケート調査で明確化する必要性が感じられた。平成30年度の現地調査で得られたこのような問題意識を次年度のアンケート調査に反映する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、これまでの文献サーベイ及び現地調査を踏まえて、本研究の理論仮説を確定し、その上で日本本社及び中国とタイの日系企業を対象にアンケート調査を実施する予定である。必要に応じて、日中タイにおいて更なる実地調査を行う。アンケート調査を実施するにあたり、中国、タイ及び日本国内の調査対象となる企業から統計分析に充分な回答を集められるのかが、研究を遂行する上での課題として挙げられる。この課題に対応するためには、インタビュー調査依頼状において本研究課題の日本企業のこれからの持続的発展にとっての重要性を強調した上で、①これまで協力してくれたコンサルティング会社にアンケート調査の更なる協力を打診し、②研究代表者と分担者・協力者がいままで訪問した企業の関係者に直接連絡し、③研究代表者と分担者・協力者が勤務している大学の卒業者に連絡し、調査への協力を打診し、④週刊東洋経済が出版した『海外進出企業総覧』の掲載情報を基に、調査対象企業を厳選し、アンケート調査への協力を依頼する計画である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(約15万円)が生じた理由は、①研究分担者が突然の事情によりタイ現地調査に参加できなくなったこと、②予定されていた国内出張費用は発生しなかったからである。これらの金額は、次年度請求した助成金と合わせて、国内外のアンケート調査、研究協力者や大学院生・学部生アルバイトへの報酬・謝金として使用する予定である。
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