2018 Fiscal Year Research-status Report
A study on the evolutionary aspect of technology management in the era of big change
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17K03953
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 秀穂 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (00378712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大転換 / 技術経営 / 前適応 / 特許 / 隣接可能性 / デジタル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究で明らかになった写真フィルム業界における大転換期の技術経営進化に関する知見を、さらに他業界で検討を進めた。その結果、音楽業界における知見が有用であると判断し、本年度は解析を進めた。 音楽業界は、管楽器、弦楽器などのアコースティック楽器において個々の製品を製造販売する企業と、電子楽器に特化した企業が存在する。電子楽器は1960年代のシンセサイザーの登場以降急速に発展した。旧来のアコースティック楽器メーカーの中で、デジタル化と電子楽器によるパラダイムシフトに追随できた企業は少ない。その中でヤマハ株式会社は、アコースティック楽器分野の維持拡大と、電子楽器分野への進出の両方で成功し今日に至っている。電子楽器の登場という大転換期において生き残りを果たした好例である。 この音楽業界の技術進化を分析するために、同業界の製品・市場情報、特許情報を収集し、さらにはヤマハ株式会社関係者へのインタビュー、楽器製造現場の見学、日本音響学会における情報収集などを通じて知見を深化させた。 見出した事例としては、ヤマハ株式会社が開発したYVS-100という、デジタル技術の知見を新規なアコースティック楽器開発に生かした画期的な製品がある。このような開発が可能になった背景には、ヤマハ株式会社の組織構造、文化があると考えられる。音楽業界の他社との比較を進める中で写真フィルム業界で観察された技術経営の前適応の概念に共通する事象が明らかになっていくと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に研究計画を前倒した成果として、写真フィルム業界の分析を通じた技術経営の前適応の概念を見出し、海外においては、IAMOT2017:International Association of Management of Technology、国内においては研究・イノベーション学会で発表を行うなどした。 本年度は、昨年計画した音楽業界での情報収集を進めて、分析に必要な十分な資料、データを得ることができた。特にヤマハ株式会社の研究・開発部門のキーマンへのアクセスを得て、インタビューなどで詳細な情報を入手できたことは大きな成果である。また特許データなどの情報についても確実に確保しており、最終年度に向けた分析の準備が十分に整った状況であるため、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
音楽業界を、写真フィルム業界に続く第二の分析対象として決定しているので、今後はこの業界の分析を進めることになる。そのための情報、データについてはすでに十分収集できているので最終年度における研究は予定通り完遂できると考えている。 分析としては、研究計画にあげている技術投資分析と事業多角化分析を実施する。技術投資分析としては、転換期前のIPC数の拡大、HHIなどの寡占度指標を写真フィルム業界においての分析と同様に示し、また各技術分野への投資を個別に解析するなどの手法を用いて詳細に分析する。また発明者ごとの技術分野の変遷を分析して、技術投資の変化を個々の研究者の単位、組織の単位で分析する。さらには隣接可能性の探索の視点から、転換期前のコア技術がどのように展開されたのかを分析する。事業多角化分析としては、技術投資分析で明らかにした多角化技術が、事業の多角化にどのように結びついたのかを明らかにする。ヤマハ株式会社に加えて、他の音楽産業に属する企業についても追加で情報を収集して比較分析を実施していく。可能であれば海外の企業についても分析の対象に加えることも検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は昨年度と同様に、研究データ整理にあたるアルバイトの使用を若干控えて研究担当者が行ったこと、特許データベースの使用料がかからなかったことなどによる。平成31年度の使用計画についてはアルバイト料、現地調査費、図書費、データベース使用などについて支出する予定であり、加えて分析のためのコンピューターも導入する。
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