2018 Fiscal Year Research-status Report
A study on generation process of path dependency for scientific research and an effect of the dependency on R & D for enterprises
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17K03966
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
品川 啓介 立命館大学, テクノロジー・マネジメント研究科, 教授 (70791549)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経路依存 / 発展経路 / イノベーション / 科学進歩 / 技術進歩 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然科学の専門学術領域の研究者集団には、それまでに蓄積された知識に囚われ他領域の進歩や現況の認識を欠いたまま研究に邁進してしまう現象が散見される(以下、経路依存と定義する)。2018年度は先端半導体露光技術開発におけるEUVL開発(有望視されている分野)とNanoimprint開発(有望視されていない分野)を研究対象とし下記定量・定性分析を行い「経路依存」の発生過程と、それが企業の研究開発へ及ぼす影響を分析した。 1.定量分析:論文データベースScopusによる、Nanoimprint開発、EUVL開発の論文累積数推移を基にした経路分析及び被引用数高の論文抽出。2.松井真二氏(Nanoimprint権威)や国家プロジェクト等研究者(EUVL)へのインタビューによる経路依存の認識他の確認。 1.の結果からNanoimprintは被引用数の高い研究が課題を解決するイノベーション(パタン離型に関わる解決)に関わるものであり、その後急速に研究が活性化する経路が見出された。一方EUVLにはそのような論文は見られずリニアな発展経路であった。2.の結果から、露光技術を採用する半導体メーカーやNanoimprint分野の研究者は、NanoimprintはEUVLと競合する研究と認識していたが、EUVL開発に携わる研究者集団は、Nanoimprintがライバルという認識は無かったこと、そして研究が活性化しないままでも研究に邁進していたことがわかった。
以上を下記国際会議で報告し、企業における研究開発戦略を策定する際に勘案すべき重要事項として活発な議論を交わすことができた。 ISPIM FUKUOKA 2019 (2019年12月2~5日)"Does path dependency in scientific progress influence technological turbulence?"
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究進捗】これまで、2017年度の青色LED開発にけるGaN開発とZnSe開発の経路依存分析を、2018年度の先端半導体露光技術開発におけるNanoimprint開発とEUVL開発の経路依存分析を定量・定性の両側面から行った。 1.定量分析―論文データベースの収録量の豊富さにより、両者の発展経路の定量的な分析は十分検討できた。2.定性分析―分析の要であるインタビューは、2017年度の研究対象は研究の成否を決めた分岐点が約30年前にあった(青色LED開発におけるGaN開発とZnSe開発の分析)。当時の研究者は第一線から退いていることが多くインタビューは困難であったが、文献調査を中心に進めた(今後は新年度分の研究と並行してインタビュー可能性を探る)。一方、2018年度は進行中の開発を研究対象としたため、研究者へのインタビューは比較的容易であり経路依存の発生を確認できた。
【発表について】経路依存の発生過程と企業の技術戦略策定への影響について、以下の国際会議にて報告している。1.ISPIM Melbourne 2018(2018年12月)"What can the SECI model tell us about scientific innovation? "2.ISPIM Stckholm 2019(2019年6月)"Creative thinking process towards the Nobel Prize in Physics"3.ISPIM FUKUOKA 2019 (2019年12月)"Does path dependency in scientific progress influence technological turbulence?"
これらをまとめ経路依存について整理した論文(査読付き)を投稿中である。以上から(2)おおむね順調に進展している区分した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に照らし、2019年度はプラズマディスプレイと液晶ディスプレイ開発の経路依存分析を対象とし、これまでと同様に以下のような定量分析と定性分析の手法を用い研究を進める。 1.定量分析:論文データベースScopusによる、プラズマディスプレイ開発、液晶ディスプレイ開発の論文累積数推移を基にした経路分析及び被引用数高の論文抽出。具体的にはプラズマディスプレイ開発と液晶ディスプレイ開発について、 ・論文累積数推移より、「発展経路」を明らかにする。・被引用数の高い研究から、知識爆発の要因となった研究を特定する。・頻出キーワードより、研究を構成する要素を特定する。 2.プラズマディスプレイと液晶ディスプレイ開発に携わった研究開発者へのインタビューによる経路依存の認識他の確認(具体的には「経路依存」が企業に影響を及ぼしたことを示す研究関係者への半構造化インタビュー(定性分析)による情報収集とGTA法によるデータコーティング)を行う。また、「経路依存」が企業に影響を及ぼしたことを記した研究開発会議関連議事録有無の確認と内容調査も行いたい。 また最終年度であることを念頭に、企業における研究開発戦略を策定する際に勘案すべき事項を明確にし、学術界・社会への貢献する概念を導出する。現時点では、一般経営戦略における事業ポートフォリオ(経営資源の最適配分の概念)と同様に、イノベーション戦略のポートフォリオ(イノベーションの不確実性を勘案しながらイノベーションのマネージメントを考える概念)の重要性について指摘するためのロジックを検討中である。その際に必要な知見を補完するための、文献調査や事例分析も加えていく。
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Causes of Carryover |
購入検討中の洋書が国内になかったため。来年度に検討を移行する。
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