2017 Fiscal Year Research-status Report
エフェクチュエーションとEOから探索する在外日本人女性起業家の成功要因
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17K03972
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
姜 理惠 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90570052)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移民起業家 / 女性起業家 / 起業家性向 / エフェクチュエーション / アントレプレヌールシップ / アントレプレナー / スタートアップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は在外日本人女性起業家を研究対象とし、「在外日本人女性起業家の起業プロセスと成功要因は何か」というリサーチ・クエスチョンを、「移民先と母国」との視点も交え、二種の定性調査を併用して探索するものである。世界的起業家調査GEMは2013年「移民起業家が母国・移民先双方の経済成長を支える」と発表し移民起業家への注意を喚起した。現在「移民」は最重要議題の一つである。日本では移民受入の議論は多いが、送り出す側としての議論は極めて少ない。そこで本研究は起業家性向を測るEO理論と、近年注目を集める起業理論の一つエフェクチュエーションを併用して在外日本人女性起業家を定性分析から探索、在外日本人女性の起業家精神と在外経験の関係などを解明し、「少産少死」型日本女性起業家支援策に与する新視点の提示を目指す。 本研究は起業プロセス・成功要因を、1.本人の起業家性向(EO)・環境、2.起業に関する意思決定プロセス、の2点から探索する。1はEntrepreneurial Orientation (EO)研究の中から「EOと組織パフォーマンスモデル(Lumpkin and Dess,1996)」を、2については「エフェクチュエーション理論(Sarasvathy,2001,2008)」を採用、2理論2種の定性分析を併用する。 2017年度は、EOを中心に徹底した文献調査とそれに基づくフィールドワークを実施した。起業家性向(EO)研究はCovin and Slevin(1989)が広く用いられるが、これを基に環境要因と業績を加味した、EOと組織パフォーマンスモデル(Lumpkin and Dess,1996)を本研究では用いる。同モデルを基にした半構造化インタビューを海外で活動する日本人女性起業家5人に実施した。結果フレーム外の概念であるFamilinessが浮上し、これまで実施してきたFamily Business研究との関連を探ることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「日本国内よりも海外で日本人女性の起業行動が活発である可能性」と「在外日本人女性起業家の起業行動と、エフェクチュエーション理論の示唆に一致が多い」という2つの発見を、GEMが示した「移民・外国人起業家の母国・移民先への貢献」「少産少死型の日本人女性起業」との指摘と併せ、本研究のリサーチ・クエスチョンは「在外日本人女性起業家の起業プロセスと成功要因は何か」とした。本研究は2つの定性調査を併用し、このリサーチ・クエスチョンを探索する。 まず、EOの観点からのインタビューとそれを分析したモデル、プロセス構築である。起業家研究で広く用いられているEOと組織パフォーマンスモデル(Lumpkin and Dess, 1996)を主なフレームワークとして採用するが、同モデルが基とした属人的アプローチによる起業家性向を測定する質問票Entrepreneurial Orientation Questionnaire(EOQ)も必要に応じて取り入れたインタビューガイドを作成し、パイロットテストと修正を経て半構造化インタビューを実施した。このインタビューの主目的は、在外日本人女性起業家の起業行動と成功要因を、起業家性向(Entrepreneurial Orientation)と環境、組織、そして業績がどのように関わり合うかの視点から分析するものとする。分析については複数人によるコード化を行うなど、研究結果の妥当性、validityの確保には細心の注意を払った。結果、研究計画時には想定していなかったFamilinessというコンセプトが関与していることが判明した。家族の一員であるという自意識が起業家行動に影響していた。これを受けFamily business研究との関連を探索し始めたところまでが現在までの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次は1年次に発見したFamilinessが女性起業家の起業家行動にどのように関わっているか、その作用とプロセスについてさらに深く探索する。 一方のエフェクチュエーション理論による分析についても準備を進める。同理論において起業家は、事前の市場分析など合理的な行動とそれに基づく意思決定を採らない。①今できることから始め、②可能な損失額を把握し、③明確な目標より柔軟性を優先し、④営業しながらパートナーシップを育て、⑤機会を創造する。こうしたプロセス・特徴は、在外日本人女性起業家に手持ち資金で開業し事業を展開しながら変容を遂げて行く自営業が多い状況と大方一致する。本理論に基づいたインタビュー調査についての準備も進め、随時実施する。
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Causes of Carryover |
在外研究を予定していたが、インタビューイーの帰国時などに実施することができたため差額が生じた。2年次以降現地調査を実施する。
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