2019 Fiscal Year Research-status Report
Research of Digital Monozukuri for i-Constraction
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17K03980
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
善本 哲夫 立命館大学, 経営学部, 教授 (40396825)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 建設生産システム / 自律分散制御 / i-Construction / 生産システム高度化 / 生産性向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
労働力不足を背景に,日本国内建設業は生産性向上に向けた取り組みを活性化させている。国土交通省によるi-Constructionのコンセプトを旗印に展開される,ICT実装による建設生産システム革新のありようを調査対象に,本研究では同業界にみるデジタル技術活用下の生産システム高度化の現状の整理を試みている。ICT建機の活用にみる無人化施工等への期待は大きく,こうした建機は海外でも積極的に導入されはじめており,日系建機メーカーも積極的に海外事業展開を試みている。しかしながら,日本の地方圏における中小建設業者においては,ICT建機をはじめとする無人化施工への取り組みや各種デジタルツールの活用・実装は資金面等からハードルが大きいことが見出された。調査研究を進める中で,中小建設業者が実装しやすいシステム確立への動きも出てきており,その特徴を掴む作業を実施した。また,海外の建設業界ではリーンマネジメントの実践が活発化しており,国内においても注目されはじめている傾向が窺える。 こうした動きを踏まえながら建設生産システム革新のありようを捉え,Connected IndustiresやものづくりIoTなどの製造業の動向との比較検討を実施し,本年度は両業種におけるデジタル革命時代の生産システム高度化に向けた業種横断的論点の整理を実施している。生産システム高度化の方向性として,自律分散制御への強い意識が両業種でともに見出され,作業環境の変動性が高い建設生産システムの知見が製造業に活用できる可能性,また「施工現場の工場化」が意識されている建設業において,製造業の知見が活用できる可能性がある。建設業と製造業がともに進化を続けるデジタル技術の活用を進める昨今において,異業種融合的な自律分散制御型生産システムの新たな類型を検討する素地が萌芽しはじめていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
労働力確保問題を背景に建設業で進化するデジタル技術を活用した自律分散制御型建設生産システム確立への期待が高まっている。建設業ではi-Constructionを旗印に,デジタル技術・ICT実装による新たな建設生産システムの確立が大きな方向性となっている。本研究では建設生産システム革新のありようを製造業の生産システムと比較し,デジタル技術活用下の生産システム高度化に向けた業種横断的論点の整理を実施し,製造業と建設業における業種横断的・異分野融合的な生産システム革新の知見相互利用の可能性を探っている。 生産性向上に向けた建設業と製造業の生産システム革新では,生産技術的視点で捉えると自律分散制御型の指向において論点を同じくしているところが多く観察される一方で,建設業ではヒト作業の合理化・効率化に関する現場改善のアプローチは,まだまだ実践されていない傾向が強いといえる。例えば,北欧では建設業へのリーン・コンセプトの適用が強く意識されはじめているが,日本ではそれほど活発でなく,昨今になった注目される傾向が出てきたといえる。 日本国内の建設生産システム革新の動向は生産工学アプローチの視点から取り組まれる傾向が強い。しかしながら,建設現場作業の全自動化は現時点でハードルが高く,生産性向上に向けた生産システム革新に向けた取り組みとしては,マン・マシン編成の新たなありようを検討することも意識されはじめている。 生産性向上と「変種・多様性生産」に対応する高いフレキシビリティの同時実現をデジタル技術の活用によって達成しようとする方向性において,建設業と製造業は課題が近似しつつある傾向も見出され,両業界が知見を相互利用する素地を整えることも可能な状況が生まれていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
進化を続けるデジタル技術は,建設生産システム革新の大きな推進力になっている。建設業ではとりわけ,i-Constructionの実践,また建設ロボットやICT研究の研究開発,無人化施工・自動化施工等の加速度的な展開が見受けられる。これらの動向を掴む調査をさらに進めていく。製造業においても,デジタル技術の一層の実装と活用において,生産性向上とフレキシビリティの同時実現が目指されている。両業種の各取り組みの知見や技術等は,デジタル革命時代の生産システム高度化に向けて相互学習が可能になりはじめていると考えられる。製造業は作業環境が常に変動する建設業の取り組みが,建設業では製造業が得意としてきたリーン生産方式や改善活動のありようが大きな参考や知見になる。今後の研究の推進方策としては,デジタル技術を活用した生産システム革新や現場能力構築に関する知見を両業界で横断的に相互利用するための論点として精査し,業種を超えた「付加価値生産性」の向上に向けた生産技術的視点と生産/現場管理的視点の両面から新たな異業種融合的なマン・マシン編成の生産システムの新たな類型を見出していく。 建設業では自動化技術など生産技術においても,作業のありようにおいても,依然として「製造業とは違う」といった見方が強い傾向にあったが,デジタル技術の進化と実装は,その発想を過去のものにしつつある。こうした時代背景のもとで,建設業ではリーンマネジメントへの関心が高まりつつあり,「施工現場の工場化」が意識されることもからも,製造業から学ぼうとする姿勢も見出されるようになっている。 今後の研究の推進方策としては,生産工学アプローチと作業ロス改善アプローチの両面から,建設生産システム革新の動向を捉えていく。
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Causes of Carryover |
調査予定先が自然災害のため,訪問が困難であった。2020年度の使用計画として2019年度訪問予定先の訪問と国際学会での発表を予定していたが,新型コロナウイルス感染情勢のため,国際学会は2021年開催に延期され,また訪問予定先も同様の理由で訪問が困難な状況である。 次年度使用計画としては,新型コロナウイルス感染拡大予防を遵守し,動向を把握しながら,今後の研究深化と発展に向けた資料収集および研究成果取り纏めの予算として使用する。
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