2018 Fiscal Year Research-status Report
組織で働くプロフェッショナルのキャリア発達の促進と停滞
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17K03982
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
古田 克利 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 准教授 (20612914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 喜文 同志社大学, 政策学部, 教授 (50207809)
金田 重郎 同志社大学, 理工学部, 教授 (90298703)
吉川 雅也 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (80802363)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キャリア / 人的資源管理 / 組織行動 / プロフェッショナル / キャリア開発 / 仕事の意味 / 職業観 / 組織適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、組織で働くプロフェッショナルのキャリア発達の促進と停滞の問題をプロフェッショナル・ビリーフの視点から捉え、プロフェッショナル人材のマネジメントのあり方を問うものである。これまで専門性を軸にして議論されることが多かったプロフェッショナルのキャリア発達の問題を、専門性だけでなく経営管理性の側面からも捉え、両者の統合に至るメカニズムに焦点をあてる。そして、プロフェッショナル・ビリーフの概念を新たに導入し、プロフェッショナルの認知を3次元(能力観、仕事観、組織観)で捉え、さらに産業、組織、および家庭の3つの視点から、複合的かつ立体的に、プロフェッショナルのキャリア発達の成長と停滞の問題に迫るものである。 本年度は、昨年度に実施したアンケート調査の結果を分析し、上司の関わりと部下の精神的健康の関連を検討した。特に、仕事の意味深さの媒介効果を想定し、定量的に検証することを試みた。分析の結果、(1)上司のメンタライゼーションから部下の抑うつに対する有意な負の影響を確認した。また、(2)上司のメンタライゼーションから仕事の意味深さに対する有意な正の影響を確認した。さらに、(3)上司のメンタライゼーション、仕事の意味深さを独立変数、抑うつを従属変数とする重回帰分析を行った結果、仕事の意味深さから抑うつに対して有意な負の影響が示され、上司のメンタライゼーションから抑うつへの影響は(1)の結果よりも弱まった。本研究の結果は、企業の精神的健康対策のひとつとして、上司のメンタライゼーションを高める取り組みが有効であることを示唆するものである。具体的な取り組みとして、上司のメンタライゼーションを高めるために上司に対するカウンセリングを行うことや、上司-部下間で仕事の意味を語り合うコミュニケーションの場を作ることなどがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)平成29年度に回収したデータを用いて、上司の関わりと部下の精神的健康の関連を検討した。特に、仕事の意味深さの媒介効果を想定し、定量的に検証することを試みた。分析結果の一部を、経営行動科学学会第21回年次大会で報告するとともに、日本マネジメント学会誌『経営教育研究』第22巻で発表した。 (2)民間企業3社を訪問し、本研究の鍵概念となるプロフェッショナル・ビリーフ(組織で働くプロフェッショナルの「職業観」「仕事の意味深さ」「組織適応感」など)に関するヒアリングをおこなった。ヒアリングの結果の一部を、オンライン論集日本産業カウンセリング学会TODAYに発表した。 (3)電機連合が2008年と2015年に実施した技術者調査の個票データを用い、2時点における技術者のキャリア関連指標の変化を検討した。リーマンショック以降の、日本の電機・電子・情報関連産業で働く技術者のキャリアの様相を明らかにすることが目的である。分析の結果、第1に、技術者のスキル開発行動の若干の2極化傾向が示唆された。第2に、国内外の社外研究者や技術者と意見交換や交流を行う者の割合はほとんど変化していなかった。第3に、現在の配属先が希望通りである者の割合は低下していた。第4に、仕事の裁量の平均値を比較した結果、変化は見られなかった。分析結果の一部を、日本労務学会第48回全国大会で発表した。 (5)組織で働くプロフェッショナルを対象にインターネット調査を実施した。具体的には、日本企業で働く正社員(ソフトウェア開発技術者、ハードウェア関連技術者、営業、経営スタッフ)を対象に、プロフェッショナル・ビリーフ(「職業観」「仕事の意味深さ」「組織適応感」など)に関するアンケート調査を実施し、3,000件のデータを収集した。得られたデータを最終年度に分析する予定である。 以上の点から、順調に推移していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、昨年度に実施したインターネット調査で得られたデータを分析する予定である。本研究の鍵概念であるプロフェッショナル・ビリーフを中心に置き、産業、組織、および家庭の3つの視点から、複合的かつ立体的に、プロフェッショナルのキャリア発達の成長と停滞の問題にアプローチする。 また、補足的インタビュー調査を実施する予定である。6月以降に対象者に接触を図り日程調整を進める。これまでの調査に引き続き、組織で働プロフェッショナルに聞き取り調査を試みる。分析結果を論文として取りまとめ国内学会誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)ヒアリングの件数が、当初予定していた人数に達しなかったため、旅費分を、次年度に繰り越すこととなった。また、アンケート(インターネット調査)の費用について、当初想定していた金額より廉価にアンケートを実施できたため、その差額を次年度に繰り越すこととなった。 (使用計画)プロフェッショナル本人やプロフェッショナルを雇う企業へのヒアリングを、今年度に実施する予定である。その旅費として、繰り越し分の金額を使用する予定である。また、インターネット調査(補足調査)費用としても、繰り越し分の金額を充当する。
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Research Products
(9 results)