2018 Fiscal Year Research-status Report
Structure for Medical Care Marketing System intended Improvement of Standard on Regional Medical Care
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17K03987
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
保田 宗良 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (20230229)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医療サービス / 調剤薬局 / 地域医療 / 医療マーケティング / 薬局イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、医療マーケティティングシステムの構築に必要な軸として、調剤薬局の活用を考えた。具体的には調剤薬局のマーケティング戦略、調剤薬局を有するドラッグストアのイノベーションについて複数の企業の「比較考察」を進めた。かかりつけ薬剤師、健康サポート薬局が制度化され地域医療への貢献が期待されているが、薬剤師は調剤業務に止まらず、地域医療の主要メンバーになることが求められている。医療サービスは、今後在宅医療サービスを展開することが想定され、薬剤師は積極的に在宅医療サービスに関与しなければならない。 こうした問題意識を背景として、学会報告を4回行い、論文3遍を公刊した。学会報告で研究の進め方、これまで明確になった知見を確認し、補強すべき項目を精査したうえで論文を公刊した。論文2遍は査読付きの学会誌なので、客観的評価を得たものである。研究を進めていくうちに薬局イノベーションの具体像を明らかにすることが必要となり、社会科学の造詣が深い薬剤師への聞き取り調査を継続し、ドラッグストアを訪問し、ビジネススキームの調査を行ったが、その成果は論文に網羅している。論文で論旨の展開が不足していた薬局イノベーションを基盤とした医療イノベーションの具体像の構築に、医薬品卸、ドラッグストアがどのように関与すべきかを示唆することが、今後の検討課題となった。医療、介護、福祉を融合したサービスが求められるが、そうした背景をふまえた医療マーケティングの像を模索することが、最終年度でやるべき課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、基本的な文献研究を進め理論的仮説の構築、研究を進める方法を明確にしたが、平成30年度は医療マーケティングシステムの構築の軸を調剤薬局の活用と定め、医薬分業の歴史的考察、薬局イノベーションの実態分析を検討課題と考えた。患者満足度の捉え方の組織ごとの「比較考察」を念頭に置き、概ね研究計画を進めることができた。文献研究、昨年度までの聞き取り調査から、調剤薬局、薬剤師を有するドラッグストアは、在宅医療サービスのゲートキーパーになるべきと考え、そうした視点から地域医療の質的向上を概観した。 調剤薬局を併設しているドラッグストアは、医療、介護の商品を揃え、薬剤師が複数の活動を行い地域医療の質的向上に寄与している。無料のイベントを行い住民の健康意識を高めつつ、顧客に取り込む工夫を進めている。自治体とドラッグストアの包括協定について、その目的を検討し、現場の聞き取り調査を行ったが人的資源と物的資源の交換というビジネススキームが明確になり、薬局イノベーションのあるべき姿が模索できた。地域包括ケアシステムは多職種連携の協働作業であるが、医療マーケティングシステムの構築は、そこを念頭に置いて進めなければならない。その際、薬剤師が多職種連携でどのような役割を果たすべきかを明確にする必要があるが、複数の社会科学に造詣の深い薬剤師に対する聞き取り調査で、その位置づけが明らかになった。 医薬品卸の関与までは及ばなかったが、そうした研究の成果を論文、学会報告で示すことができ、人的ネットワークが拡大したのでおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、薬局イノベーションを包括した医療イノベーションについての考察を深めなければならない。医療イノベーションは、技術的なイノベーションが論点となりがちであるが、この研究で求められるのは医療組織のイノベーションの展開である。マーケティング思考を包括した像を示すためには、患者満足度の向上のあり方を検討しなければならない。医療サービスの満足度調査は、他のサービス業の満足度調査と異なり独自性を有するが、公表されている満足度調査は不十分なものが多い。 そうした問題意識を背景として、現場の聞き取り調査、必要があればアンケート調査を試み医療組織が患者満足度の向上にどのように取り組んでいるのかを明確にする。大規模病院の満足度調査は先行資料、先行研究が蓄積されているので、外来専門の診療所、調剤薬局の満足度調査に着手して、研究の範囲を拡大する。そうした事例研究から医療イノベーションの進展を模索する。 平成30年度年と同様、学会報告を4回程度重ね、専門研究者と議論を重ね、これから進むことが想定される在宅医療サービスを視野に入れた、患者満足度の向上を検討し、医療組織のイノベーションに医薬品卸、調剤薬局、ドラッグストアがどのように関与すべきか業態ごとの「比較考察」を進め、介護、福祉のサービスがどのように連携すべきかを包括した医療マーケティングシステムの構築を、複数の論文で示唆することを試みる。
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