2017 Fiscal Year Research-status Report
企業と顧客のくちコミの価値共創:ネガティブくちコミのサービス・リカバリー
Project/Area Number |
17K03997
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
仁平 京子 千葉商科大学, サービス創造学部, 准教授 (70714492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | くちコミの価値共創 / ネガティブくちコミ(悪いくちコミ、NWOM) / うわさ(噂) / フェイク情報 / サービス・リカバリー / 顧客不満足 / ブランド・リスクマネジメント / オンラインレピュテーションマネジメント(ORM) |
Outline of Annual Research Achievements |
消費者が、ソーシャル・メディア上で企業の不祥事をネット告発し、消費者発信型メディアを媒介とした消費者のエンパワーメントが増している。消費者問題との関連では、若者消費者に対する企業の初期対応の悪さなどの「ネガティブ情報」がインターネット上で拡散し、企業が、商品の自主回収と製造を一時中止した事例がある。 本研究では、「ネガティブくちコミ(わるいくちコミ、NWOM)」の情報価値の高さに着目し、NWOMの「サービス・リカバリー」と顧客満足プロセスに関する理論構築を行うことを目的とする。 第一に、従来のくちコミ研究では、ポジティブくちコミ(よいくちコミ、PWOM)やバイラル・マーケティングなどのくちコミ・マーケティングを中心にしてきたが、本研究では、インターネット上でNWOMを情報発信する現代版プロシューマー(インターネット上の情報編集に参加する消費者)の存在に着目した。 第二に、本研究では、消費者のインターネット上でのNWOMの情報発信動機について、消費者の不満反応とくちコミの伝達(Richins 1983)や消費者の不満反応と不満の強さの関係(Wilkie 1994)、消費者の不満感情の吐露(森田 1999)などの先行研究を検討した。事例研究では、食品メーカーや飲料メーカーを研究対象に、インターネット上のNWOMや「うわさ(噂)」、「デマゴギー(デマ)」、「フェイク情報」に関する消費者問題の事例を検討した。 第三に、本研究では、企業の価値共創者として顧客を捉え、企業と顧客の「くちコミの価値共創」の視点からくちコミの発生プロセスを捉える。本研究では、NWOMやネガティブ情報に対する企業の信頼回復のための初期対応や広報戦略、再発防止策に向けて、サービス・リカバリーやサービスの失敗、サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)などのサービス・マーケティングの研究成果を適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「ネガティブくちコミ(NWOM)」の情報価値の高さに着目し、顧客満足による「ポジティブくちコミ(PWOM)」と顧客不満足によるNWOMの関係を分析した。 PWOMの文献サーベイでは、オピニオン・リーダーやマーケット・メイブン(市場の達人)、インフルエンサーによる推奨、バイラル・マーケティングやインフルエンサー・マーケティングなどのくちコミ・マーケティングの手法を検討した。そして、NWOMの文献サーベイでは、NWOMの発信動機、消費者の不満反応と不満の強さの関係、消費者の不満反応とくちコミの伝達、製品購買後の否定的な感情の生起頻度とNWOMの伝達の関係、PWOMとNWOMの伝達動機などを検討した。 事例研究では、食品メーカー(菓子・アイスクリーム、インスタント食品)や飲料メーカーを対象に、インターネット上のNWOMや「うわさ」、「デマゴギー」、「フェイク情報」に関する消費者問題の事例を検討した。企業のコンプライアンス遵守が求められる中、消費者の苦情行動やクレーム処理に対する「サービス・リカバリー」と「レピュテーションリスク」の管理、企業のNWOMやうわさ、デマゴギー、フェイク情報などの「ネガティブ情報」と「ブランド・リスクマネジメント」が課題となる。 そして、企業は、NWOMやネガティブ情報の連鎖予防やレピュテーションリスクの管理のために、「オンライン・レピュテーション・マネジメント(ORM)」によりインターネット上の評判管理を行い、企業のブランド・リスクマネジメントの維持・構築を図ることが重要となる。 これらの研究成果は、日本経営診断学会の2017年度第5回関東部会や2017年度第6回関東部会、日本経営診断学会第50回全国大会、日本消費経済学会東日本大会などで学会発表を行った。学会発表の研究成果は、日本経営診断学会や日本消費経済学会などの学会誌に論文投稿をする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、「NWOM」の「サービス・リカバリー」と顧客満足プロセスに関する理論構築を行うために、文献サーベイとパイロット調査を行うことを目的とする。 第一に、老舗企業の「ブランド・リスクマネジメント」、NWOM発生防止策のためのくちコミ管理、消費者問題発生の際の初動、信頼回復のための取り組みを検討する。第二に、老舗企業の「オンライン・レピュテーション・マネジメント(ORM)」によるオンライン上の「ネガティブ情報」や悪評、風評被害などのリスク管理を検討する。 文献研究では、くちコミ研究とサービス・マーケティング研究の融合に向けて、企業の価値共創者として顧客を捉え、企業と顧客の「くちコミの価値共創」の視点からくちコミの発生プロセスを捉える。本研究では、NWOMやネガティブ情報に対する企業の信頼回復のための初期対応や広報戦略、再発防止策に向けて、サービス・リカバリーやサービスの失敗、サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)などのサービス・マーケティングの研究成果を適用する。 定量調査では、インターネット上でNWOMを情報発信する現代版プロシューマーの存在に着目し、高校生や大学生などの若者消費者を調査対象に、ソーシャル・メディア上でのNWOMの情報発信動機、消費者の不満感情の吐露、消費者の不満反応の段階などのアンケート調査とグループ・インタビューを実施する。そして、定性調査では、食品メーカー(菓子・インスタント食品・冷凍食品など)の消費者問題と不祥事報道を事例に、老舗企業のNWOMの初期対応や広報戦略について、企業インタビューを実施する。 これらの研究成果は、日本経営診断学会2018年度関東部会や日本経営診断学会第51回全国大会、日本消費経済学会第43回全国大会などで学会発表を行う。学会発表の研究成果は、日本経営診断学会や日本消費経済学会などの学会誌に論文投稿をする。
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Causes of Carryover |
本研究では、消費者調査やグループインタビュー、企業インタビューなどの実証研究を平成30年度に実施するためである。
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Research Products
(8 results)