2019 Fiscal Year Research-status Report
ネット小売普及以降の小売国際化現地化戦略モデル構築のための研究
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17K04006
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
小松 雄一郎 (丸谷雄一郎) 東京経済大学, 経営学部, 教授 (60360228)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小売国際化 / ネット小売 / M-PESA / ボダボダ / 国家の関与 / BOP |
Outline of Annual Research Achievements |
2017-2018年度にはネット小売普及以降の小売国際化現地化戦略モデルを構築するために不可欠な以下の2つの追加的視点を明確にした。第1の視点は新興市場におけるネット小売普及に関する国家の役割の重要性である。第2の視点は都市部での普及と全国普及では国家の役割の重要性が異なることである。国家は第1~3フェーズの都市部での普及、第4フェーズでの地方を含む全国普及の双方に強い役割を担う。 2019年には国家の関与の在り方についてより明確にするために、2017年度に現地調査した外資規制緩和を通じてネット小売普及を進める国家の関与が中程度の国メキシコ、2018年度に現地調査した労働組合など既存のプレイヤーの普及反対を重視し国家が消極的関与しか行っていない国アルゼンチンに続いて、上記2つの諸国とは異なるネット小売普及に関する政府の関与の特徴を有する東アフリカ主要国ケニアと西アフリカ主要国ガーナの2か国において現地調査を行った。 特にケニア現地調査においては、ネット小売普及に関する国家の関与は国家財政の脆弱さにより弱いが、国家の脆弱さを補うために、伝統的に関係の深いアラブ系、旧宗主国が送り込んだインド系、近年一帯一路政策の後押しにより関与を強める中国系といった多様なルーツを有する資本の存在に着目し、彼らを受け入れるという実態が明確になった。そうした風土は外資と結びついたスタートアップ企業を育み、ケニアをスタートアップ大国へと押し上げつつある。こうした潮流はネット小売普及に向けた重要なインフラを構築しつつあり、ケニアだけではなく周辺国への移転も期待できる。特に、BOP市場に革新をもたらしたM-PESAの成功やBOPゆえの工夫であるボダボダ(バイクタクシー)といった草の根輸送手段をスタートアップ企業による情報技術により高度化は代表例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由1:2017年度に行ったネット小売既存研究の整理とメキシコ実態調査での確認、2018年度に行ったアルゼンチン実態調査での経験も踏まえて、2019年度にはケニア小売市場におけるネット小売普及に関する政府の関与及び現地小売実態に関する現地調査を行った。特に、一帯一路でアフリカでの影響力を拡大する中国政府の後押しによりケニアネット小売市場において近年急激にシェアを伸ばしている中国資本ネット小売の現地担当者にインタビュー調査を行うことができたことは、ルートをつくること自体が難しいこともあり、一定の評価ができると考えられる。 理由2:上記の現地インタビュー調査と並行して行ったケニア小売実態調査に関しても、変化が激しい現地小売業者の主要店舗をこまめに回って行ったこうした調査はほとんどなく、デリバリーを含むネット小売への対応が一部新興企業によって先行的に行われている実態やボダボダに代表される既存のネットワークの向上度が一定の成果が表れていることを確認できた点では一定の評価ができると考えられる。 おおむねとした理由 ①現地調査先変更:西アフリカの現地調査候補地だったナイジェリアが治安やルート確保及び資金時間的な制約により実現できず、第2候補のガーナになったことである。 ②新型コロナウィルス流行によるインタビューのキャンセル:ガーナでインタビュー予定であった現地大手小売業者の総合者へのインタビューが新型コロナウィルス流行の情報が日程決定後に判明し、直前でやんわりNGを出されたことにある。こうしたアクシデントはこの分野の研究ではよくあることだが、ルートを確保しただけに残念なアクシデントであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度が研究最終年度であったため、過去3年間で中南米主要国小売市場及びアフリカ主要国小売市場において行ったネット小売普及以降の小売国際化現地化戦略モデルの構築に向けての現地調査結果をから得た知見をまとめ、成果として発表しているが、成果発表を今後も続けていく予定である。 既に行った成果発表としては、ケニアでの現地調査の結果を中間報告として発表した2019年11月23日に亜細亜大学で開催された2019年度第1回アジア市場経済学会東部部会研究報告会での発表がある。この学会で頂いた知見やその後の追加調査の内容を踏まえて論文としてまとめ、最終成果としてもまとめ、2020年度中に公表予定である。 さらに、3年間の知見を踏まえて明らかになったネット小売普及において政府の関与が成否を左右する実態を踏まえて、政府の関与度に応じたネット小売普及の実態を明らかにし、ネット小売普及以降の小売国際化現地化モデルの構築に向けて研究を進めていく予定である。
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