2017 Fiscal Year Research-status Report
Research on the ethical problems of marketing research in the context of value creation
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17K04013
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
福田 康典 明治大学, 商学部, 専任教授 (90386417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マーケテイング・リサーチ / 個人情報 / プライバシー / 情報センシティビティ / 価値共創 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、文献研究と平成30年度に実施する実証的研究の準備作業を中心に行った。特に、助成事業初年度となる本年度は文献研究を中心に行った。探索した領域としては、マーケティング(特にサービス・ドミナント・ロジック及びマーケティング・リサーチの部分を中心に)研究、消費者行動研究、プライバシーとIoTに関する研究、個人情報保護法に関する研究、そしてヨーロッパのセンシティブ情報に関する研究などが主なものであった。 こうした研究の結果、以下のような知見を得ることができた:①個人情報の収集や利用に対する認識が日本と欧州において異なっている部分があり、特に経済・資産状況に関わる個人情報と市民権に関わる個人情報に対して知覚されるセンシティビティに大きな差が見られる点、②IoTやポイント制度などがマーケティング・リサーチに応用されることで、消費者は半強制的に情報の収集と利用に同意せざるを得ない状況であり、マーケティング・リサーチ倫理の問題が喫緊の課題となってきている点など。 また、平成29年度の後半には、次年度に本格的に実施する予定の実証的研究に向けた準備作業(少数の回答者に対する非構造的なヒアリング調査とアンケート調査)を実施した。大学生に対して、消費者として自らの買い物情報や製品利用情報を企業が収集・利用していくことについての意識をアンケート及びインタビューを併用する形式で調査した。当初の計画では、これを複数回行い、次年度実施予定のより大規模な調査に備える予定であったが、1回目の調査結果が予想以上にバラつきが多く、また想定していなかったような回答も多く得られたので、傾向性の把握に時間がかかってしまい、2回目以降の調査は次年度へ繰り越すこととなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究目標は、文献研究を通じて価値共創時代のマーケティング・リサーチにおける倫理的問題を理解すること、そして次年度に行う実証的研究の準備作業を行うことであった。 一つ目の倫理的問題の理解という目標については順調な進展が見られた。文献研究は、CiNiiや学術文献データ・ベース(Web of Science)、あるいはGoogle scholarなどを利用しながらまずは包括的なサーベイを行い、各論文の引用からさらにサーベイ対象を広げていくという流れで、予定していた研究領域の文献研究を順調に進めている。また、情報倫理に関する専門家へのヒアリングを通じて、個人情報に関わる内外の参考文献や参考ホームページなども文献研究の対象に含めることができた。 二つ目の次年度準備という目標についても、おおむね順調に進んでいる。しかし、1回目のプリテスト(少数の大学生に対するアンケート調査とインタビュー調査を混合した調査)で得られた回答が予想以上にばらつきがあり、一般的な傾向性を抽出する作業に多くの時間を費やしたこと、また予想外の回答に対する解釈や整理についても時間を費やしたことなどの理由から、準備作業として複数回の実施予定していたプリテストは、本年度、1回しか実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施することのできなかった残りのプリテストに関しては、来年度の早い段階で実施し、まずは実証的研究の準備作業を完了する予定である。そのうえで、今後は、本年度に考察した価値共創におけるマーケティング・リサーチ倫理的問題の特徴を踏まえる形で、研究仮説の抽出と精緻化を行い、実証的研究へと展開していく予定である。具体的には、個人情報の第三者提供という状況に焦点を絞り、ネットワーク化された価値共創の中でのマーケティング・リサーチ倫理が分析可能な研究枠組みについていくつかの研究仮説を設定し、それらの経験的妥当性について検討を行う。 また、IoTやウェアラブル製品などICTの発達による情報利用の新しい側面に関しても、文献研究等を引き続き行い、リサーチ倫理問題のより包括的な把握を試みていく。こうした仕組みや製品の普及は、従来のアンケートや電話を使ったマーケティング・リサーチとは全く異なる倫理問題を生じさせているからである。 さらに、本年度の考察を通じて、個人情報のセンシティビティに関する認識に日本とヨーロッパで違いが見られる点が確認できたので、これについても、なぜそうした認識の差が出てくるのかといった理由も含め、定性的及び定量的な調査を行っていく。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」および「これまでの進捗状況」の欄にも書いた通り、平成30年度に実施予定の実証的研究の準備作業として、本年度は複数回プリテストを実施する予定であった。しかし、1回目のプリテスト(少数の大学生に対するアンケート調査とインタビュー調査を混合した調査)で得られた回答が予想以上にばらつきがあり、一般的な傾向性を抽出する作業に多くの時間を費やしたこと、また予想外の回答に対する解釈や整理についても時間を費やしたことなどの理由から、複数回の実施を予定していたプリテストは、本年度、1回のみの実施となった。そのため、実施できなかったアンケート調査にかかる諸費用を次年度使用とした。これについては、平成30年度に速やかに実施する予定である。
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Research Products
(4 results)