2017 Fiscal Year Research-status Report
コーポレート・ガバナンスの巧拙と不祥事発生時点の株価下落の関係解明に関する研究
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17K04034
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
櫻田 譲 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (10335763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 宏 東京理科大学, 経営学部経営学科, 教授 (00292079)
大澤 弘幸 新潟経営大学, 経営情報学部, 准教授 (30468962)
加藤 惠吉 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (70353240)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 企業不祥事 / コーポレート・ガバナンス / イベント・スタディ / 役員報酬 / 役員退職慰労金 / 乳幼児死亡事件 / 過大役員給与 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究成果は以下の4つに分類される。 1つ目の研究成果として研究代表者が単著『税務行動分析』(北海道大学出版会)を上梓した。本書は研究代表者のこれまでの成果をまとめており、大半がこれまでの論文によって構成されているため、新たに書き下ろした論文は一部に過ぎない。しかしその新たに書き下ろした部分は、本申請課題に関連する記述である。その内容であるが、これまでの研究代表者の成果について、公開後に検討された関連する他者による論攷を踏まえており、本年度以降執筆される予定の論文について方向性を確定する上で有益である。 2つ目の研究成果として検討課題の一つであった乳幼児がパチンコ店駐車場で放置され、死亡するという事件について、資本市場はネガティブ反応を示すことを拙稿にて明らかにしていたが、その他数例の乳幼児死亡事件に対する資本市場の反応を検証した結果、期待された資本市場のネガティブ反応はその多くの追加検証で観察されることが困難であることが明らかとなった。この新知見について今後の精査が期待される。 3つ目の研究成果として本研究課題ではガバナンスの一側面として報酬実態についても注目している。年間の報酬総額1億円を超える支給事例について超高額報酬が容認される背景を明らかにしようとしており、具体的な成果は本年度中に発表する予定である。 4つ目の研究成果として超高額の役員退職慰労金の支給実態にも注目しており、一般的傾向を解明する目的のために事例を収集している。近時、役員退職金の支給は廃止される傾向にあるが、当該制度の廃止という流れに逆行する興味深い事例も散見され、これらについて今後、検証を行う予定である。 5つ目の成果として税務行動研究会(平成29年8月21日 北海道大学経済学部棟1階 110演習室)の開催によって研究代表者の本申請課題に関連する構想に対し、数多くの有益な知見を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は『税務行動分析』の上梓にリソースが割かれたものの、結果的に本書刊行を契機とした最近の研究代表者の成果の見直しは、本申請課題に取り組むに当たって着眼点の明確化や資料収集における副産物の獲得として貢献している。このため平成29年度における当初心配された研究上の遅れはみられない。本申請課題で最優先の検証項目は不祥事と役員報酬であり、前者については先述した乳幼児死亡事件のみならず、その他の不祥事にも注目してゆきたい。着眼点は損害額が経済的側面から注目されやすい不正会計などの経理的な要因に由来する不祥事ではなく、人命が失われる事件に注目し、資本市場に与える影響を検証したい。また後者については1億円以上の超高額役員報酬の支給実態解明のため、分析結果が導出される段階にある。 その他、広く企業不祥事として捉えるならば、消費者金融大手4社の破綻に注目し、コーポレート・ガバナンスと破綻の関係性を検証した松谷・櫻田[2018]によって、本申請課題の一部について成果導出が完了したと言える。企業不祥事が発生する背景には稚拙なコーポレート・ガバナンスが背景となる証拠を今後も明らかにしてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した「5.研究実績の概要」に示す2つ目から4つ目の成果を踏まえ、一層の検討を行い、学会報告や査読論文への投稿を目指す。 なお現在、本申請課題の枠外で共同研究をしている者による本申請課題への貢献が少なくないため、それらの者に対する研究費の執行を検討している。また本年度も税務行動研究会の北海道大学大学院経済学研究院における開催を準備し、研究代表者の本申請課題に関連する構想に対し、数多くの有益な知見を獲得するよう努めたい。
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Causes of Carryover |
本申請課題の取り組み当初における予想される大澤弘幸氏による貢献に比し、実際の貢献度が高くなったため、昨年度中に前倒し支給を実施し、執行額の増額を促したが、当該増額について大澤氏が十分な理解をしていなかったことが原因である。
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Research Products
(24 results)
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[Book] 税務行動分析2018
Author(s)
櫻田譲
Total Pages
398
Publisher
北海道大学出版会
ISBN
978-4-8329-6838-7
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