2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 康弘 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (70451507)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 管理会計 / 新製品開発 / アドバース・セレクション / 相殺インセンティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究成果は単著論文``Adverse Selection When a New Type of Project Emerges''の執筆である.この論文はほぼ完成しており,2020年4月中旬時点で投稿準備中である. この論文は,経営者のタイプ(特に経験の大きさ)が観察不可能な状況で,どういった条件のもとで企業内で新製品開発プロジェクト(既存製品のモデルチェンジを含まない)が認可されるか,及びその規模について,アドバース・セレクション・モデルを応用して分析したものである.経験者のタイプとして,経験は浅いが新製品が持つべき性質はよく理解している経営者と,経験は深いが新しい製品の性質やその市場については理解の浅い経営者を仮定している. この論文の主要な結果は,(1) 本モデルの設定における均衡の特徴付け, (2) 新製品開発プロジェクトの可否の要件,(3) 経験の深い経営者の労働市場における留保利得が一定水準以上の場合,一定の条件のもとで新製品開発プロジェクトに対する投資が効率的な規模で行われるの3点である. 本モデルは標準的なアドバース・セレクション・モデルをわずかに設定変更したものであるので,均衡を丁寧に描く必要がある.これが成果の(1)と(2)である.成果(3)はいわゆる相殺インセンティブに関するものであるが,経営者の労働市場において供給側が少なく,経験豊富な経営者の報酬が高騰しやすいほど,新製品開発プロジェクトは効率的な規模で実行されることを示している.これは日本の製造業等(経験豊富な経営者の報酬が比較的低い)では,新製品開発が抑制されることを意味している. 今年度後半に国際学会等での発表に応募しようと考えていたが,今般の事情によりこれを取りやめ,海外雑誌に投稿することとした.現在その準備を進めている.なお,国内での研究会ではすでに発表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は海外雑誌への投稿を控え,ほぼ問題なく進行している.今般の新型コロナウイルスによる状況のため,国際学会での研究発表はやめて海外ジャーナルへの掲載を目指すこととした.なお,国内で開催された研究会では発表をおこなっている. 研究内容については上記概要のとおりだが,他の論点として,経営者のタイプ情報の非対称性のもとで分権制組織における新製品開発プロジェクトのあり方を分析する必要性が生じる可能性がある.このまま海外雑誌への投稿を行う予定だが,関連研究でも頻繁に取り上げられる論点なので,この論点についても分析を行う可能性は残っている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究期間は4年であり,最終年度である2020年度は海外ジャーナルへの論文投稿をおこなう. この目的のため,今年度の本研究課題に関わる研究では,主に計算の確認をおこないつつ,追加的な分析結果を探ること,分析結果を経営学や会計学(主に管理会計)の視点から解釈し直すこと,及び分析結果の実証研究への検証すべき仮説の提案について検討する. ただし上記進捗状況でも触れたとおり,分権制組織に関する分析をおこなう必要があるかもしれない.この場合,同様の非対称性情報のもとでモラル・ハザード・モデルとして解き直し,論文の内容を追加することになる.
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