2017 Fiscal Year Research-status Report
Economic Effects of FD regulation in Japan
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17K04042
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80323913)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公正開示 / 業績予想 / 情報の非対称性 / 情報開示規制 / タイムリー・ディスクロージャー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の狙いは、公正開示(Fair Disclosure)をめぐる取り組みが企業の情報開示活動やその評価、企業行動に与える影響を検討することにある。平成27年12月に金融庁が行った、証券会社のアナリストによる情報伝達行為並びに内部管理体制に対する業績処分事案を契機に、アナリストによる発行会社への取材やアナリスト・レポート以外の手段による情報伝達のあり方を見直す動きが加速している。これに伴い、企業の情報開示活動やそれをめぐる取り組みは進化するとも、後退するとも指摘されている。本研究では、上記の見直しに伴い、企業の将来情報や非財務情報を伝達する取り組みがどのように変化するか、それに伴い企業に対する評価や企業・会計行動がどのような影響を受けるかを実証的に検証することで、公平開示をめぐる制度的な取り組みの経済的影響を明らかにすることを狙いとしている。今年度は、米国を中心に蓄積されている先行研究をレビューしたうえで、(1)証券会社で情報管理に対する内部管理体制をいつのタイミングでどのように整備したかについてのアンケート調査、(2)企業のCFOに対する公正開示をめぐる意識変化のアンケート調査、(3)経営者による業績予想をめぐる変化についての統計解析、(4)株式市場における決算公表に対する評価の変化の統計的解析の4点を実施した。分析を通じて、ガイドライン公表前後における証券会社による情報管理体制の変化や経営者による業績予想の変化、株式市場の決算情報に対する評価の変化について確認することができた。その他、公平開示をめぐる情報開示行動を検討するにあたっての会計情報の有用性変化やその背後にあるコーポレートガバナンスなどの状況などについても併せて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度には、米国とEUにおける公平開示制度の特徴をそれぞれ明らかにしたうえで、それらを基礎として実施されているアーカイバルデータを活用して実証分析を展開している先行研究を整理したほか、日本では業務上の提携と業績予想あるいはその修正が公平開示において重要な位置づけになることが確認された。特にほとんどの日本企業は業績予想をレンジではなくポイントで公表しており、業績予想も頻繁に修正する企業もあることから、公平開示をめぐる検証の中でも、経営者による情報開示の在り方の変化について分析しやすい環境にあることが確認されたことから、それをめぐる研究を中心に分析仮説が描きやすく、当初の想定より実証的な分析に早いタイミングで着手できた。その他、日本証券業協会が主催する研究会にて報告する機会を得ることができ、証券業協会の担当の皆様にもインタビューができたことも、当初の計画以上に研究が進展している理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に公平開示規制において主たる規制対象となる証券アナリストをめぐる取り組みの変化を中心に分析を進める。分析にあたっては、証券アナリストによる業績予想情報やその修正に関するデータベースを構築していくほか、証券アナリストの分析結果としての銘柄推奨およびアナリストレポートの内容分析にも着手していく。なおアナリストレポートについては、証券会社からの協力を得る必要がある。これについては、現在、複数の会社の証券アナリストを統括する組織や担当者へアプローチしている。
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Research Products
(8 results)