2018 Fiscal Year Research-status Report
行動的原価企画の理論と実践における逆機能問題に関する研究
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17K04057
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
加藤 典生 大分大学, 経済学部, 准教授 (50555068)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原価企画 / 人間行動(人間心理) / 逆機能 / 行動会計学 / サービス / 行動的原価企画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、基本的には実態調査を中心とし、原価企画の実施により意図しない結果(逆機能)が生じる企業と生じない企業が存在する理由を人間行動(人間心理)の視座から解明するとともに、そうした問題に対してどのような対応策が提示できるのかを、管理会計的視点から考察することである。 原価企画は、昨今、製造業だけでなくサービス業でも実践されており、その中でも人間行動(人間心理)が特に重要となってきている。こうした原価企画の適用業種の拡大に伴い、原価企画理論の一層の精緻化が求められており、本研究は人間行動と会計学を扱う行動会計学の領域から、原価企画理論を行動的原価企画理論として、再構築を試みることによって、どの業種でも適用可能な原価企画理論を提示することができると考える。 以上を踏まえ、本年度は、実態調査を行いながら、行動的原価企画(人間心理を踏まえた原価企画実践)の重要性を確認し、主に(行政サービスを含めた)サービス業(地方公共団体、飲食業)の検討を行った。 結果、原価企画を最初に実施されたというトヨタ自動車においても、各部署間で働く従業員の人間心理の理解が原価企画の成功を左右すること、地方公共団体で導入が進む指定管理者施設の運営において、公共性が高く採算性が低い施設では原価企画が有効な手段となりうる可能性があること、そして、人手不足が深刻化する飲食業において、品質を維持しつつコスト低減し人材不足への対応を図るのに原価企画が役立ちうることが分かってきた。 ただし、従来の原価企画理論と上記で示した人間心理の理解を踏まえた行動的原価企画理論の違いがまだうまく識別できているとは断言できない。この点に関しては、現在、研究を進めており、来年度の研究として取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実態調査に関しては、調査先の日程の都合と筆者の日程の都合がつかないこともあったが、メールや電話を利用して、質問を調査の事前に行ったりあるいは調査後に行ったことにより、研究を進めていくことができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31(令和元)年度は、研究計画に基づきながら、実態調査および論文執筆に取り組んて行く予定であり、すでに6月にインタビュー調査の許可を企業から受けている。 同じ企業内であっても、原価企画を実施する仕方により、意図しない結果(逆機能)が生じる恐れがあり、その理由の一つとして考えられてる人間行動(人間心理)、とりわけ人の発言内容に着目して検討していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)物品費に関しては、資料の読み込みを優先して研究したことにより、今後本研究課題において必要になる資料購入を翌年度に遅らせたからである。旅費に関しては、調査先と筆者との日程の都合がうまくつかず翌年度に実施することになったものや、早割航空券を利用できたことで支出額を抑えられたからである。
(使用計画)物品費に関しては、主として原価企画、研究開発、心理学、人的資源管理など、行動的原価企画の理論および実践に関して検討するのに有益な文献等の購入を予定している。旅費に関しては、主として九州、中部、関東といった地域を中心に原価企画の実施状況についてインタビュー調査を行うために使用する。
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