2019 Fiscal Year Research-status Report
国際会計基準第41号「農業」の適用実態調査に基づく公正価値会計の考察
Project/Area Number |
17K04077
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
戸田 龍介 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00271586)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 国際会計基準 / IAS第41号 / 公正価値 / 農業会計 / 生物資産 / 森林再評価額 / 再評価剰余金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,IFRSを採用するウクライナ農企業Astarta,同じくスウェーデン森林企業Holmenおよびノルウェー水産企業Marine Harvestの3グループを対象に,それぞれのアニュアルレポートを調査分析することで,IAS第41号「農業」適用に基づく公正価値測定の実態を明らかにした。調査分析の結果,日本ではあまり知られていない実態が明らかになった。まず,各グループとも公正価値測定される生物資産を計上しており,またその変動額を,計算および表示の方法に相違はあれど,基本的に利益構成項目として計上していた。さらに,これも公正価値測定される農産物を,棚卸資産として計上する場合があり,その変動額を,生物資産の公正価値変動額と同様に,利益構成項目として計上する場合があった。また,それ以外にも,企業結合の結果獲得される「子会社取得関連利得」や有形固定資産を公正価値で再評価することにより生じる「再評価剰余金」,さらに新たな伐木計画の策定し直しに伴い大掛かりな森林再評価を行い,もって巨額の「比較可能性影響項目(=森林再評価額)」を計上していたことも明らかにした。調査分析をとおして改めて指摘できることは,少なくともここで取り上げた3グループとも,公正価値測定に基づく多額の農林水産関係の諸項目を財務諸表に計上しており,さらにそれら諸項目に関する公正価値変動額をこれも多額に,しかも利益の構成項目として計上している実態があったことである。さらに注目されるのは,公正価値測定がグループ内部の専門家または経営者自身,あるいは経営者の策定する計画や目標に大きく依拠して行われていた点である。公正価値変動額が各グループの最終利益を構成する点に鑑みれば,IAS第41号「農業」の適用により,外部公表利益の算定にグループ内部の予想・計画・目標等が大きく影響していた実態が指摘できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】において書き記したように、IFRSを採用する世界の農林水産企業に対する調査自体は、各企業のアニュアルレポートを分析することで、当初の計画通り進んでいた。ただし、当初の計画では、その後、そういった海外の農林水産企業に対して、直接現地に赴きヒアリング調査を行う予定であった。なお、当該現地調査は、年明けの2月、3月の春休みの時期に行う予定であった。周知のとおり、新型コロナウイルスの影響で、こういった海外現地調査の予定が全てキャンセルとなったため、進捗状況は遅れざる得ないこととなった。また、そのため、研究期間を1年延長している。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外のIFRS採用農林水産企業に対する現地ヒアリング調査については、新型コロナウイルスの影響を見極めた上で対処する。なお、研究期間内の収束が見込めないという最悪の事態も想定し、これまで行ってきたIAS第41号「農業」を適用する世界の農林水産企業のアニュアルレポートに関する調査分析を引き続き行っていく。また、当該アニュアルレポートについては、これまでかなりの農林水産企業について収集を行ってきたが、まだ必ずしも十分とは言えない。よって、IAS第41号「農業」を適用している世界の農林水産企業のアニュアルレポートの収集には、これまで同様に力を入れていく予定である。
|
Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】において書き記したように、本来の計画では、本年度の2月、3月において、IFRSを採用する世界の農林水産企業に対し、、直接現地に赴きヒアリング調査を行う予定であった。しかしながら、周知のとおり、新型コロナウイルスの影響で、こういった海外現地調査の予定が全てキャンセルとなったため、大幅な次年度使用額が出るに至った。次年度の使用計画としては、【今後の研究の推進方策】において書き記したように、海外のIFRS採用農林水産企業に対する現地ヒアリング調査について、まずは新型コロナウイルスの影響を見極めた上で対処する。なお、研究期間内の収束が見込めないという最悪の事態も想定し、これまで行ってきたIAS第41号「農業」を適用する世界の農林水産企業のアニュアルレポートを調査分析を引き続き並行して行う。よって、世界的情勢も見つつ、IAS第41号「農業」を適用している世界の農林水産企業のアニュアルレポートの収集に、これまで同様次年度使用額を使う予定である。
|
Research Products
(1 results)