2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04081
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東 健太郎 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20535843)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 社会・環境情報開示 / ESG / 被災地支援 / 温室効果ガス排出量 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、大きく2つの方面から社会・環境情報が資本市場に与える影響を分析した。1つは社会・環境情報のうち、熊本地震に対する被災地支援情報のアナウンスメントに対する資本市場の反応について実証的な研究を実施した。熊本地震後に被災地支援を実施した企業の義援金額と日付を収集し、そのアナウンスメントに対して企業がどのように反応をしたか、をイベント・スタディにより分析した。結果、アメリカや中国企業をサンプルにした先行研究と整合的に、被災地支援のアナウンスメントに対して、資本市場はポジティブな反応をしていたことが明らかになった。これまで、理論的には、被災地支援アナウンスメントは企業のreputational capitalの構築に寄与し、それにより売上や収益性の拡大が見込まれること、また、CSRは有事の際には保険としての機能をもつことなどから、企業の被災地支援は、「戦略的な」コーポレートフィランソロピー であることが提唱されてきた。熊本地震に対する被災地支援のアナウンスメントへのポジティブな影響が確認されたことから、わが国の企業においても、アメリカと中国と同様の影響が資本市場においてみられることが明らかになった。 第2には、環境情報のうち、温室効果ガス排出量が株価に対して与える影響をについて価値関連性分析を実施した。株価に正の影響を与えていることが実証的に知られている簿価、利益に加えて、温室効果ガス排出量がどれだけのネガティブな影響を与えいるか、を環境省による「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」と「環境報告書プラザ」におけるデータを使用して分析を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災地支援アナウンスメントに関連して期待していた実証結果を得ることができた。CARは全体的にポジティブであった。1週間以内に当該アナウンメスメントを実施した企業と、1週間をすぎてから実施した企業では、ポジティブな反応の大きさが統計的に有意な範囲で異なっており、1週間以内に実施した企業のほうが、ポジティブな反応が大きかったことも明らかになった。企業からみると、被災地支援を実施するのであれば、より早いタイミングで実施したほうが、資本市場でのポジティブな反応が平均的には高くなるであろうことを示唆している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず被災地支援のアナウンスメントが資本市場に与える影響については、英語でのドラフトを執筆し、国際学会での報告を実施する。また、温室効果ガスの排出量については、今後、さらなる分析を実施して、結果を検討する。当初の予定であった包括的なインデックスについても検討を進めているが、報告基準の枠組みが大きく変わっている現状に鑑み、網羅的なインデックスを実施するよりも、ピンポイントに個別の情報を取り上げて、資本市場への影響を検討するアプローチも並行して検討をしている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、情報収集のための海外出張を実施できなかったことにある。その理由は2018年度にアメリカ・カリフォルニア州立大学モンタレーベイ校に滞在することが決定し、そのための準備により日本を離れることが困難であったことによる。
|
Research Products
(3 results)