2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K04081
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東 健太郎 立命館大学, 経営学部, 教授 (20535843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イベント・スタディ / コーポレート・フィランソロピー / コーポレート・ガバナンス / 被災地支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、社会・環境情報の中でも、企業の被災地支援に関するアナウンスメントが、株式市場に対して与える影響について分析をした。昨年度までに、被災地支援のアナウンスメントは株式市場に対してポジティブな影響を及ぼしており、地震発生後、1週間以内にアナウンスメントをリリースした企業は、1週間以降にリリースした企業よりも、よりポジティブな反応を得ていたという実証結果を得ていた。 今年度は、この実証結果を発展させた。企業の株価に対してポジティブな影響を及ぼす理論的な説明として次の3つの要因を想定した。1つは、被災地支援アナウンスメントの"buying goodwill"効果であり、被災地支援を実施することが企業の信用やブランドを高めるという見地から変数を設定した。この分析視点については、国内株主の割合が高い企業ほど、また、従業員による個人的な寄付を伴う企業ほど、資本市場からよりポジティブな影響を受けている実証的結果を得た。2つめの視点は、コーポレート・ガバナンスに関連する視点である。コーポレート・フィランソロピーは、経営者の裁量的行動とみなされており、より質の低いガバナンスの仕組みをもつ企業による企業ほど、資本市場からのポジティブな評価は低くなるものと仮説した。しかし、この視点からは、十分な実証的結果を得ることはできなかった。3つめは、"signaling financial strength" の視点である。被災地支援の実施は、資本市場に対して自社の財務状態のstrengthに関するシグナルを送ることになる。この仮説と整合的に、拠出した義援金額が、前期の総資産額や総利益に対して占める割合の高い企業ほど、よりポジティブな資本市場からの影響を受けていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実証的結果に加え、今年度はCalifornina State University Monterey Bay(アメリカ)のNicolas Dahan氏を共著者として迎えることにより、分析に理論的な深みを与えることができた。特に資本市場のポジティブな反応を説明するための3つの視点は、先行研究においてはまだ実証結果によってサポートされていない領域であり、日本のデータによりこれをサポートできることに意義があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分析対象領域を広げるために、コーポレート・フィランソロピー(被災地支援)以外の領域において、社会環境情報が資本市場に対して与える影響について分析をするためのデータ収集を継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、年度末に予定していた出張を予定通りに実施することができなかったため。
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