2018 Fiscal Year Research-status Report
会計変化の本質の研究:制度からの実務および理論の展開に対する逆影響の検討を中心に
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17K04084
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
澤登 千恵 大阪産業大学, 経営学部, 教授 (30352090)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 会計史 / 財務会計 / 監査 / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
財務会計制度を最初に確立したことで知られる19世紀イギリス鉄道会社およびガス会社に関する議会資料(1800年-1947年)を,従来の歴史研究に加えて,テキストマイニングで分析して検討し,さらにその分析結果をデータマイニングによって検証している。「制度化(のシステム)に存在していた概念」が実務および理論の展開にどのような影響を与えてきたのかについて明らかにすることを目的としている。 平成29年度の1847年までの検討に続いて,平成30年度は1871年までの分析・検討を行った。具体的には,鉄道会社およびガス会社に関する法案と法案立案のための会議の議事録について分析・検討を行った。議事録については,legislation.gove.ukのサイトを活用して,RailwayやGasという単語を中心に資料を収集した。 入手した資料については,まず従来の歴史研究によって一つずつ確認し,議論されてきた会計問題の流れを検討した。その後,入手できた資料全てをテキスト化し,年度ごとのファイルにまとめ,ファイルごとに全出現タームの頻度表を作成し,そこから会計に関するキーワードを抽出した。抽出したキーワードについては,頻度の推移を概観し,従来の歴史研究によって検討できた会計問題の流れと比較した。 具体的な成果としては,キーワードとして,capital(account)およびpublic(audit)を抽出し,同キーワードの頻度は,特に1840年代後半1850年代の間で上昇しており,従来の歴史研究による検討とあわせて,当該期間,資本勘定の必要性および政府監査の必要性が議論されてきたことが明らかとなった。研究成果の一部は,毎月,本学で開催している研究会等において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
議会資料の分析の中で,capital(account)およびpublic(audit)というキーワードを抽出でき,資本勘定の必要性および政府監査の必要性が会計の問題として議論され,このことが,法制化に至らなかったにもかかわらず(法制化に至っていないにもかかわらず),会計報告書作成や監査の実務に影響を与えた可能性があることを研究会で報告した。しかしながら,質疑応答において,その背景の検討が不十分で,資本勘定の必要性および政府監査の必要性が議論されるようになった背景を,議会資料からだけではなく,当時の世論からも検討する必要があるとアドバイスを受けた。自身としても,法案および会議の議事録の分析のみから背景を検討することに限界があると感じていたため,当時の世論も検討した上で結論付けを行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の理由から,世論を検討するにあたり,19世紀前半既に発行雑誌,EconomistやRailway times等を確認し,検討する予定である。予算的に可能であれば,重要な雑誌については,一定期間の購読を実行し,キーワードを含む記事については,法案および議事録同様に,テキスト化し,年度ごとのファイルとしてまとめ,分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
日本で入手出来ない資料について,イギリスのNational Archiveに赴き,自ら資料複写を行う予定であった。しかしながら,ネットやサイトで入手できるものが多く,まずはこれらを整理し,検討可能なものについては分析することにしたため,次年度使用額が生じた。National Archive には今年度赴く予定である。
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