2021 Fiscal Year Research-status Report
会計変化の本質の研究:制度からの実務および理論の展開に対する逆影響の検討を中心に
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17K04084
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
澤登 千恵 大阪産業大学, 経営学部, 教授 (30352090)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計史 / 財務会計 / 監査 / 鉄道 / ガス / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は19世紀イギリスにおける鉄道会社とガス会社の会計実務の発展に対する議会法制定のプロセスの影響を検討することである。1800年から1947年までの議会資料を,従来の歴史研究に加え,テキスト(データ)マイニングで分析している。2021年度までに,鉄道においては,上院と下院の議事録について,1947年までの全期間の資料収集とテキスト化を完了し,1869年までの期間については,データの整理とテキストマイニングによる分析を完了した。議会内委員会報告書については,全期間について、資料収集,テキスト化,データの整理、テキストマイニングによる分析を完了した。さらにガスにおいても、議会内委員会報告書の分析を開始した。 ガス会社に対しては,1862年以降毎年度,ロンドン市内のガス会社の会計報告書が一般に公開されるようになった。注目すべきは,それらはガス会社が株主総会の議事録に挿入していた会計報告書とは異なっていたことである。様式や表示科目の記載順が異なり,収益勘定については、部門ごとに表示科目が整理されるようになった。さらに様式は全会社で統一されていた。加えて,1870年7月以降、一般に公開された全ての会社の会計報告書は複会計システムで作成されるようになった。その中には,実務では当該システムを採用していないところも含まれていた。これについは、"Unification of Accounts by the Public Sector of Gas Companies in London in the Second Half of the 19th Century"というタイトルで、THE ELEVENTH ACCOUNTING HISTORY INTERNATIONAL CONFERENCEにエントリー中である(ガスについては、北海道大学 春日部光紀氏との共同研究)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鉄道において、上院と下院の議事録については,1889年以降の資料が予想以上に大量であったため、テキスト化は完了した一方で,ファイルを年ごとに整理する作業が遅れ、分析できていない期間が残っている。議会内委員会報告書については,全期間、分析まで完了した一方で,原稿作成が遅れている。一方で、ガス会社についても、議会内委員会報告書の分析を開始したが、1889年以降のテキスト化と分析がまだ残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の計画は次の通りとする。 ①ガスにおいて、議会内委員会報告書の全期間の分析を進め,従来の研究方法による考察とともに、原稿にまとめ,学会にアプライする。 ②鉄道において、議会内委員会報告書の分析結果に,従来の研究方法による考察を加えて,1849年までの制度化の過程における概念とその背景について原稿にまとめ,学会にアプライする。 ③鉄道において、上院と下院の議事録の分析を完了させ,従来の研究方法による考察を加えて、②の原稿で得られた知見の再検討も行いながら、制度化の過程における概念とその背景について原稿にまとめ,学会にアプライする。 ④全期間を通した分析結果を用いて,イギリスにおける1849年までの会計問題の相対的な重要性を明示した上で、①②③を踏まえて、当時の会計の意義を原稿にまとめる。
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Causes of Carryover |
海外学会報告のエントリーを見送ったため,旅費交通費が発生しなかった。
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