2022 Fiscal Year Research-status Report
会計変化の本質の研究:制度からの実務および理論の展開に対する逆影響の検討を中心に
Project/Area Number |
17K04084
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
澤登 千恵 大阪産業大学, 経営学部, 教授 (30352090)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 会計史 / 財務会計 / 監査 / 鉄道 / ガス / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,19世紀イギリス鉄道会社と他の公益事業に関する議会資料を,従来通りの歴史研究に加え,テキストマイニングとデータマイニングで検証することである。「制度化(のシステム)に存在していた概念」が実務および理論の展開にどのような影響を与えてきたのかについて,特に「逆影響」の存在に注意しながら,明らかにすることを目的としている。鉄道会社とガス会社に関する議会内委員会報告書について,全期間について、資料収集,テキスト化,データの整理、テキストマイニングによる分析を完了した。研究成果は北海道大学 春日部光紀氏との共同研究に反映され,EAA2023 ANNUAL CONGRESSにエントリーしアクセプトされた(北海道大学 春日部光紀氏との共同研究,5/26報告)。詳細は以下のとおりである。 ロンドンの主要なガス会社は,The Metropolis Gas Act of 1860の制定前年の法案提出後,共通の監査人による財務表の監査を受けることになると,各ガス会社は株主向けに作成した財務表を一定の様式に修正するようになり,1862年以降は,当該財務表を議会に提出するようになった。1869年には,当該財務表には一般貸借対照表が含められるようになった(複会計システム)。興味深いのは,当時のガス会社のほとんどは,一般貸借対照表でなく,貸借対照表を作成していたにもかかわらず,これを契機として,財務表を複会計システムで作成するようになったことである。その後,Gas Clauses Act 1871によって,複会計システムが法制化される。つまり,多くのガス会社における複会計システムの採用は,直接的には,ガス会社に対する法の影響でも,当時のリーダーカンパニーであったGas Light and Coke会社の影響でもなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
鉄道においては,議会資料のテキスト化,テキストマイニング,時系列分析が完了した一方で,辞書(複数ターム)の作成と,総あたりの相関分析の必要があることがわかり,プログラムの書き直しを行っている。プログラムのアレンジは,数理データシステムの岩本氏にお願いした。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した辞書を使用した総あたりの相関分析のプログラムが完成次第,分析を再度行い,当該分析結果に基づき原稿をまとめる。ガス会社については,北海道大学 春日部光紀氏とともに,ここまでの各ガス会社の原稿をまとめる形で原稿を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,コロナ禍によって海外での学会報告に参加できなかったため旅費交通費が予想したほど発生しなかったことがあげられる。当該予算は,プログラムのアレンジのサポートのために使用予定である。
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