2017 Fiscal Year Research-status Report
The empirical study for the interaction between inter-firm and intra-firm cost management activities
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17K04085
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂口 順也 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10364689)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 組織内 / 組織間 / 相互作用 / 原価管理 / 経験的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の初年度に当たる平成29年度では、まず、組織内と組織間での原価管理活動の双方向的な関連性についての理論的基盤を構築するために、管理会計や隣接領域の先行研究の整理を包括的に実施した。具体的には、組織内と組織間での原価管理活動の相互関連性に関わる欧米の管理会計研究(Coad and Cullen,2006; Cooper and Slagmulder,1999, 2004; Cuganesan,2006; Dekker,2016; Fayard,Lee,Leich and Kettinger,2012; Kajuter and Kulumala,2005; Mouritsen, Hansen and Hansen,2001; Rusen and Stouthuysen,2017; Wouters,Anderson and Wynstra,2005など)や、日本企業の原価管理実務に関わるわが国の管理会計研究(岡野,1995; 加登,1993; 谷,1996; 諸藤,2013; 門田,1993など)である。これに加えて、管理会計の隣接領域の研究(Kale,Dyer and Singh,2002; Schreiner,Kale and Corsten,2009; Wang and Rajagopalan,2015 など)も範囲に含めることにより、網羅性を確保するよう工夫した。これにより、基礎となる組織間マネジメント・コントロール、組織間と組織内での原価管理活動に関連する概念や双方の関連性、さらに、両者の相互関連性に影響を与える要因について、多くの知識を獲得することができた。 また、組織内と組織間の原価管理活動の双方向的な関連性や、その基礎となる組織間マネジメント・コントロールに関わる研究報告を実施し、国内外の研究者と広範な意見交換を行った。加えて、組織間マネジメント・コントロールを専門とする国外の研究者と打ち合わせを行い、本研究課題の遂行上考慮しなければならないポイントを明確化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本年度は、当初予定していた組織内と組織間での原価管理活動の双方向的な関連性についての先行研究の整理を、管理会計だけでなく関連する領域も含めて包括的に実施することができた。また、組織内と組織間の原価管理活動の双方向的な関連性や、その基礎となる組織間マネジメント・コントロールに関わる研究報告を、国内の学会(日本管理会計学会全国大会:福岡)だけでなく、国外の学会(European Accounting Association Anual Congress: Spain, Asia-Pacific Management Accounting Research Symposium: Korea)でも実施し、多くの研究者と様々な意見交換を行うことができた。 さらに、組織間マネジメント・コントロールを主要な研究テーマとする国外の著名な研究者と継続的に連絡を取り、組織間マネジメント・コントロールの構造、組織間マネジメント・コントロールに影響を与えるリスク要因、リスクマネジメントとの関連性、国内と海外の差、および、組織内と組織間の相互作用に関する専門的な意見交換を行うことができた。ここで得られた知見は、上記の先行研究の整理の円滑な遂行に大きく貢献した。その他、本研究課題の中間的な成果として、国内の研究雑誌だけでなく、国外の研究雑誌において研究成果を複数公表することができた。 以上から、本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の第二年度に当たる平成30年度では、組織内と組織間での原価管理活動の双方向的な関連性についての先行研究の調査を継続するとともに、これまで実施してきた広範な文献調査を起点として、本研究課題の後半において実施する予定である調査内容を明確にし、組織内と組織間の原価管理活動の関連性についての概念モデル(さらに、リスク要因などの影響を考慮した双方向的な関連性についての概念モデルなど)を開発する。これにより、組織内と組織間の原価管理活動の関連性に関わる理論的な整理といった、本研究課題の具体的な研究目標の一つを達成することを計画している。 ここにおける概念の整理やモデルの開発は、関連するインタビュー調査や質問票調査の基礎となるため、さまざまな視点から評価を受けつつ、より慎重に実施しなければならないといえる。そのため、組織間マネジメント・コントロールや、組織内と組織間での原価管理活動の双方向的な関連性に関心を持つ国内や国外の研究者と頻繁に連絡をとり、研究上のアドバイスを受けるだけでなく、これまでの研究成果を国内や国外の研究会や学会などで中間成果として発表することを予定している。さらに、国内の企業実務家や実務家経験を有する研究者と可能な限り接触し、これまでの研究成果の妥当性や、経験的な調査を実施する上での注意点などについて確認する。これにより、本研究課題が着実に遂行できるように配慮することを計画している。
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Causes of Carryover |
本年度では、次年度使用額が10万円程度生じている。こうした次年度使用額が生じた理由は、おもに外国出張の旅費が予定していたよりも多くかからなかったためであり、より具体的には、出張時期などにより航空機代金がそれほど多く生じなかったため、および、滞在期間が比較的に短期であったため滞在費が低く抑えられたためによる。 次年度では、本年度と同様に、外国の研究者との意見交換、打ち合わせ、論文やワーキング・ペーパーの作成、および、これらの過程で生じる本研究課題に関連した研究成果(中間成果)の国内外での報告を実施することを計画している。そのため、本年度に生じた次年度使用額10万円程度は、おもに外国出張の旅費などとして利用することを計画している。
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