2018 Fiscal Year Research-status Report
相互行為から見る中山間地域への移住の実態:移住者と地元者の語りにおける境界と融合
Project/Area Number |
17K04097
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
福島 三穂子 宮崎大学, 地域資源創成学部, 准教授 (40735784)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中山間地域 / 語り / 会話分析 / 移住者 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宮崎県の中山間地域である、宮崎県東諸県郡綾町と西米良村小川地区の小川作小屋村を主な研究フィールドとしながら、移住者と移住先の地元民との相互行為を会話分析や相互行為分析を方法論とし分析し、移住者と地元民の共存 の実態を、彼らの語りの中から明らかにしていくことで地域創成への貢献を目指すものである。平成30年度は、29年度に引き続き、主に地元の方々とのネットワークつくり、聞き取り調査、データ収集、文献調査を重点的に行った。また、キングスカレッジロンドン(イギリス)や、エセックス大学 (イギリス) の協力者と異文化の境界と融合という問題について研究打ち合わせを行い、さらに共同で現地調査を実施した。 本研究は、並行して行なっている別プロジェクトをネットワークの基盤としているが、30年度は特に宮崎大学地域資源創成学部の、地域理解実習や地域探索実習な どの教育カリキュラムも使いながら、地域の方々との交流ネットワーク構築してきている。質の高いデータ収集を目的に、様々な地域活動に参加し、宮崎県東諸県郡綾町では、主にエコパーク推進室や産業観光課との連携を図り、小川作小屋村では、小川作小屋村運営協議会、関係部局(婦人会やチーフ会)との連携を図ってきた。また、宮崎への移住の状況を把握するための情報収集、聞き取りを、宮崎ひなた 暮らしUIJターンセンターにて行ってきた。 上記の活動は、今後「田舎暮らし」という限られた文脈の中で、そこに住み続けてきた人々と移り住んできた人々、「地元民」と「よそもの」というアイデン ティティがどう表示されるのか、その境界を当事者 達はどう彼らの相互行為の中で線引きしているのかを分析するためである。途中経過は、別プロジェクトの結果報告の中で行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集の遅れがあることにより、分析、報告に遅れが生じていることがある。これは、29年度同様、現地までのアクセスの問題が大きく、土砂崩れ等による交通規制により、予定していた撮影や調査が困難であった。また、会話分析の手法を使ったテープ起こし(トランスクライブ)に、雇用できる学生を育成中であり、撮影記録のデータ化にも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度同様、宮崎県東諸県郡綾町との連携については、別プロジェクト:「綾生物圏保存 地域の生態系の保全と持続 可能な利活用の調和に関する研究」をベースに、綾町の移住者と地元民からの聞き取り調査を継続する。婦人会を中心とした方々と座談会を開き、 「食」をキーワードに、移住者と地元民が自由に話す場を作り、「よそもの」の目から見た資源と「自分たち」の目から 見た資源を、彼らがどう語るのかを分析するためのデータ収集を継続する。地域の伝統行事をどう 地域住民が企画し、実践するのかなど、そこで起こる相互行為をデータとして撮影し、データトランスクライブ・分析を継続する。また、インタビューなど、エスノグラ フィックな調査も継続する。 宮崎県西米良村小川作小屋村との連携に関しては、アクセスが難しい状況ではあるが、できるだけ訪問する機会を増やし、小川地区に一番の経済効果をもたら した、「地元の味」として誇る小川作小屋村四季御膳の継承をドキュメントしていく。「わたし」が作る料理は、「他者」には作れない、という問題が存在し、 レシピの作成が進まない中、この融合が進まない限り地元の味が消滅してしまう危険性があるため、調理の現場などでの彼らの語りの現場のビデオ撮影も継続し、広く発信するために情報の多言語化も行う。料理は 高齢の地元民にとってアイデンティティの一部である。「わたし」に帰属するものが、「他者」 と共有するものへと変化する、そのプロセスを追っていく。データトランスクライブも継続し、会話分析者とのデータセッションの数を増やし分析の質を上げていく。上記の活動における調査経過は関連学会や研究会等、また地元の方々が出席する機会において報告していく。国内外の関連する研究者と議論し、様々な視点から問題を掘り下げ、 フィードバックを得ることで、今後の出版物や発表への準備をする予定である。
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Causes of Carryover |
データ収集のための出張が予定していた程出来なかったこと、また会話分析の手法によるデータの書き起こし(トランスクライブ)を行うことが可能な学生を育成中であり、30年度においては雇用が難しかったことが大きい。
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