2017 Fiscal Year Research-status Report
Representation of Collective Memories in the Manhattan Project National Historical Park
Project/Area Number |
17K04099
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
桝本 智子 関西大学, 外国語学部, 教授 (00337750)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マンハッタン計画 / 歴史記念国立公園 / 原爆 / 集団的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
マンハッタン計画歴史記念国立公園は全米に3か所あるが、その中心となるロスアラモスを訪れた。この公園はロスアラモス研究所に付属するブラッドベリ―科学博物館、ロスアラモス歴史協会と国立公園の共同運営となっている。科学博物館長、ロスアラモス歴史協会が運営する博物館長、公園の設立と運営に深く関係するロスアラモス郡の関係者、そして、実現に尽力をしたAtomic Heritage Foundation会長へのインタビューを実施した。ロスアラモスの町全体が科学者の町であり、また、核ミサイルなどの兵器製造や冷戦時代のイメージが残っている。そのイメージを変えるべく、歴史上の「偉大な発見」がされたという面を強調しようと取り組んでいることがわかった。科学博物館は兵器ではなく、環境問題の取り組みや宇宙開発の展示の部分も取り入れており、未来に繋がる開発と歴史的な偉業の両面を打ち出していることがわかった。マンハッタン計画という名の通り、ここでの焦点はいかに科学者が戦時下で地元の人々とも協力をしながら発明に取り組んだのかというこが重視されている。国立公園設立時に批判がでていた原爆投下後の広島や長崎の被害についてはどのように取り入れるのか、ということに関しての議論は進んでいない。 ロスアラモス歴史協会は館長と理事メンバーが広島と長崎を訪れ、原爆の日の式典に参加し、地元の関係者との交流を深め、9月には広島平和記念資料館の館長及び関係者をロスアラモスに招き、博物館での原爆被害者の遺品を展示する画期的な話し合いが進められていた。しかし、今年度2月の理事会決定でそれが中止となった。これは地元民の感情を考えたとのことだが、スミソニアン航空博物館での原爆展の中止と重なる部分がある。退役軍人と科学者という違いはあるが、ロスアラモスという土地が語る歴史は注意深く選択されながら創造されている経過を確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大きな理由として二点挙げられる。 まず、研究者自身の大学の移籍のため、生活環境と研究環境が大幅に変わり、インタビューの実施は大体はできているが、他の関係者からの情報を得るには時間的制約があった。次に、トランプ政権になり、国立公園に対する予算が大きく変わり、また、国立公園長官の交代も運営に大きな影響を与えている。フォローアップインタビューから得られた情報によると、開園二年目の国立公園で、まだ整備途中であるが予算の凍結により計画の実施が停滞している状態である。しかしながら、この計画停滞時期に各関係者がどのような思惑を持って公園の整備を進めようとしているのかを聞いていくには良い機会とも考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きインタビューを行う。まず、ロスアラモス歴史協会博物館館長に広島・長崎展計画が中止になった経緯を詳しく聞く。また、今回ロスアラモスでの展示は中止になったが、同様の展示がハワイとロサンゼルスで開催される予定である。広島と長崎の関係者にも経緯を確認し、展示に対してどのような取り組みと今後の期待があるのかを確認していく。特に、ハワイは真珠湾があり、アメリカでは原爆と対に語られることが多い。そのような地で展示の計画が進められていることはどのような経緯があったのかを確認する必要性は大きい。 マンハッタン計画歴史記念公園開設の議会承認時に国立公園長官であったチャベス氏は、アメリカ大学での原爆展訪問時に、国立公園を原爆の議論の場としたいという発言をしている。現在長官は交代しているが、チャベス氏にも当時の設立計画を確認し、参考にしていく予定である。
|
Causes of Carryover |
旅程の時間的制約により、インタビュー実施が計画よりも少なかったことに起因する。次年度は初年度の状況変化を踏まえて引き続きインタビュー調査を中心として使用計画を立てていく。 まず、ロスアラモス歴史協会博物館館長に広島・長崎展計画が中止になった経緯を詳しく聞く。次に、マンハッタン計画歴史記念公園開設の議会承認時に国立公園長官であったチャベス氏への連絡を試みる。現在長官は交代しているが、チャベス氏にも当時の設立計画を確認し参考にしていく予定である。政府機関での関係者の交代は立場も方針も一新されることが多いが、少なくとも設立当初の過程を知る上で重要な役割を果たしている人物であるのは間違いない。連絡を取るのは難しいことが予測されるが、ロスアラモス歴史協会を通じて連絡を取る予定にしている。 ロスアラモスでの展示は中止になったが、同様の展示がハワイとロサンゼルスで開催される予定である。広島と長崎の関係者にも経緯を確認し、展示に対してどのような取り組みと今後の期待があるのかを確認していく。特に、ハワイは真珠湾があり、アメリカでは原爆と対に語られることが多い。そのような地で展示の計画が進められていることはどのような経緯があったのかを確認する必要性は大きい。文献研究としては設立当初の資料をデジタルで入手できれるものは研究室より行い、それ以外はアメリカ国立図書館とスミソニアンでの収集を予定している。
|