2019 Fiscal Year Research-status Report
ミュージアム・史跡観光を用いた多文化円卓対話の東アジアにおける効果研究
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17K04115
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 百代 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20451734)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 異文化コミュニケーション / 東アジア / 日本 / ミュージアム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アジアの文脈で異なる世界観を持つ人々が対話を通じ他者の視点に触れながらどのように自己認識・相手に対する理解を再構築させていくかを調べ、いわゆる認知・感情がコンフリクト状態にある中での「直接対話」の効果を検証する。データとして日本と中国・韓国・台湾の学生の「ミュージアム鑑賞経験」共有後のディスカッションおよび参加者の個別インタビューから得たテキストを利用する。 本年度は、データ収集のための調査を計画し、準備を行った。調査には海外調査と国内調査を含み、海外調査は、前年度から持ち越した台湾調査および今年度もともと予定していた韓国調査のいずれについても実施に向けて準備を進めた。国内調査も、予備調査を来日留学生及び日本人を対象に行い、調査手法やプロセスの確認、データ分析手法の確認を行った。想定していたプロセスでは目的とするデータ分析ができない部分があることが明らかになり、海外及び国内の本調査で実施する手法の修正を行った。 しかしながら、予定していた本調査時期にその実施が困難になる新型コロナウイルス感染拡大という世界的危機が発生したため、その対策方針に応じて、すべての調査を中止・延期せざるを得なくなった。また調査によって収集したデータ分析をもとに論文執筆を目指していたが、そうしたアウトプット展開も延期とした。しかし、昨年度までに検討した調査枠組みなどを利用した関連研究としてアジアの都市での人々のマインドマップや人間関係構築に関する研究成果を他の研究者との共同発表という形で行い、間接的にではあるが本研究につながる考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本調査の実施を予定していた時期に、アジア各地において新型コロナウイルスの感染拡大という危機的状況が始まり、その拡大防止対策が求められた。当初は国境をまたいでの行き来は完全に閉ざされていたわけではないが、調査参加予定者の安全を鑑み、調査実施の中止を決定した。その後、日本国内でも状況が深刻さを増し、国内での移動や密閉した空間での複数人数での会合などの自粛が求められるに至り、国内調査も中止とした。 したがって、予定していた本調査が全くできないまま本年度が終わってしまい、その後に予定していたアウトプット(本調査の一部を分析した論文執筆や研究会発表等)にも展開ができないままとなってしまった。 先方とのスケジュール調整や参加者の募集などの事情により調査実施期を設定したので、仕方のないことではあるが、想定外の状況となり、研究計画全体を通して非常に遅れてしまうこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
世界的な感染症対策が必要とされる状況はしばらく続くとも言われており、国境を越えての移動や直接対面が必要な調査は実施を予定することが困難な状態が続くことも想定すると、若干の研究計画の見直し・変更を検討しなければならないと考える。 基本的方針としては可能な限りオリジナルの研究計画の実現を目指す、ということとするが、状況を見つつ参加者の安全確保を第一に、手法を切り替える代替案を用意する。代替案としては、相手国に移動し直接対面して実施する円卓対話ではなく、それぞれの国の学生に自国についての調査とビデオ作品制作を依頼し、それを互いに見つつオンライン会議室内で対話する、という円卓シネマ対話の手法を援用することを検討する。 直接対面することでお互いに感じる相手の「体温」を感じることがオンライン会議システムでは難しいため、代替案実施によって得られなくなるデータも少なくないとも考えられる。しかし今回の研究計画実施期間は限られているため、社会状況が好転するまで一切の研究を延期するのではなく、まずは代替案調査であっても実施し、その後状況が整った際に(今回の研究期間を超過したとしても)改めてオリジナル調査を行うこととしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額については、実施する予定であった国際及び国内における各地調査のための予算(旅費及び謝金等)・論文執筆のための校正予算であった。本年度の研究計画に含めていたが、すでに述べた通り、新型コロナウイルス感染拡大によりすべて中止としたため、そのまま予算を使用することなく年度を終えることになった。 次年度は、本年度実施する予定であった本調査(オリジナル案または代替案による)の実施を目指すため、その際の資金とする。元々次年度に予定していた調査については、オリジナル案による本調査実施となる場合は、次年度中の実施はせず、その翌年度に実施時期をずらす。ただし、代替案実施の場合は、一部分の実行については他の調査と同時に行うことが可能になると思われるため、可能な限り進めることとする。 また、本調査によって得られたデータをもとに分析を進め、速やかに学会発表や論文執筆というアウトプットへ展開させる。
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