2017 Fiscal Year Research-status Report
Aiming for a new Evolving society from <Disasters-Time Economy>
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17K04118
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
似田貝 香門 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (40020490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三井 さよ 法政大学, 社会学部, 教授 (00386327)
齊藤 康則 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (00516081)
三浦 倫平 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (10756836)
清水 亮 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40313788)
佐藤 恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90365057)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 復興 / 被災者支援 / 災害時経済 / ボランティア経済 / モラル・エコノミーmorals economy / 連帯経済 / コミュニティ集合経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
阪神・淡路大震災以降の数多くの災害の中の復興過程で最も弱い箇所、それはなかなか復興自立できない、個人(世帯)の領域である。それは復興に必要な公的資金や市場の財源が、コミュニティ領域や個人(世帯)の領域をカバーできないからである。そこで私たちはこの問題を捉えるため、〈モラル・エコノミーmorals economy〉、〈ボランティア経済圏〉、〈市民的共同財=現代的コモンズ〉という3つの概念から構成される〈災害時経済Disasters-Time Economy〉という概念を措定し、以下の視点から研究を進めた。 非営利法人関係資金、社会的支援活動等の非行政的、非市場的領域たる市民社会の、震災等の災害時に自立しようとする人々を、「いのち」・「くらし」・「ちいき」を基礎的に支える、根源的なエコノミーの出現とその役割の検証を求た。その検証とは、市民社会の被災地支援の財源の形成と、その持続の可能性を発見することである。 今年度は、〈市民的共同財=現代的コモンズ〉として、市民等の寄附による、被災者支援活動のための基金の実態とその理論的把握を行った。 市民等の〈市民的共同財=現代的コモンズ〉がどのような経緯で形成され、また市民による市民活動や市民事業への実践的配分の理論的意義は何か、を問うた。この問いによって、それらはどのような意味で「連帯経済」という社会的仕組みとなりうるのか等について、阪神・淡路大震災以降の、市民基金、コミュニティ基金等の進展状態を概観する。そこから、復旧・復興過程の全体的仕組みの実態と各経済領域の果たす役割の実態、地域再生のプログラム、災害時に形成される「市民社会」の「連帯経済」の社会的意義等についての将来的課題を検討し、復興から新しい社会形成を支える「連帯経済」の物的基盤条件を明らかにする手がかりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画であった、〈社会的災害共同財〉を形成していく非市場的経済行為としての〈モラル・エコノミー〉、その財の形成・配分・消費に形成される社会的関係と空間的広がり〈ボランティア経済圏〉の実態と、共同財の実践組織と配分ルールの実態を明らかにするための、a)95年阪神・淡路大震災以降設立され今日まで活動している神戸市の「しみん基金・KOBE」等5つの団体を対象に、市民が運営・管理する仕組みの基金の必要性の活動史と設立思想について調査、b)東日本大震災では、2016年「困窮者への緊急支援を行い、将来の相互扶助の仕組みにつながる支援体制を構築」を目的に、設立された「扶助基金」実行委員会(宮城県南三陸町)の活動の調査は、順調に実施された。 その研究成果は、地域社会学会報告(2018年03月)及び日本災害復興学会分科会「市民による支援経済(連帯経済)の現状とその可能性」(2017年09月)、『東日本大震災と〈復興〉の生活記録』(吉原直樹・似田貝香門・松本行真編 六花出版,2017年03月)で発表した。 復旧段階(第2STEP)から復興段階(第3STEP)は、支援者にとって大きな、かつ長い「踊り場」状況であることが大きな課題として浮かび上がった。この停滞的混迷ともいえる「踊り場」で、多くの支援団体は、「撤退」した。従って、支援活動から見えてくる、あるいは見ようと復興の展望が、語られないまま支援は終焉してしまう(復興論なき支援論)。多くの支援団体が撤退していった後の 復興段階までの長い踊り場(停滞的混迷/生産混迷)を支援活動として、どのように対応するか、が新たに一つのテーマとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
支援活動にとって、復旧と復興の極めて長い「踊り場」状態の確認と、支援の復旧段階から、多くの支援団体が撤退していった後、1)支援活動から復興論(復興プラン=次なる社会の像)をどのように構築するか、2)撤退していった後の 復興段階までの長い踊り場(停滞的混迷/生産混迷)の支援活動を、どのように考えるか、が一つのテーマ。支援活動は、概ね復旧段階〈第2STEP〉で事実上、撤退=終焉していく現実がある。 したがって、この段階では、①復興段階(第3STEP)の主体とそれを支える支援者が不在となりがちで、②復興主体と支援との関係性も不明、③そこから、支援者による復興構想や復興論が曖昧となる。国や地方自治体の「復興計画」のみが一人歩きする。ここに復興論(構想)なき支援論の現実がある。つまり、復旧段階(第2STEP)から復興段階(第3STEP)は、支援者にとって大きな、かつ長い「踊り場」状況となっている。めざされる実践としては、こうした復旧段階と復興段階の間の複雑な様相期なかで、改めて支援の対象を見いだし、復旧段階(第2STEP)から復興段階(第3STEP)へと意識的に向かう支援論=復興論を目指すことが必要である。以下、次年度以降、復旧段階までの支援経済の到達点とその限界と、復旧段階から復興段階への過渡期を乗り越えようとするいくつかの支援実践とその実践論理を展開したい。 そのため、復興グッズ支援活動による、石巻のいくつかの支援団体(「応援のしっぽ」の地域経済構想 、「シャロームいしのまき」の「障がいで町興し」、「はまのね」の蛤浜プロジェクト等を対象に、改めて地域に根ざした集合経済(コミュニティ経済、「地域経済」の別様な視点)を作り上げていく支援の力と構想力を考えたい。
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Causes of Carryover |
1)共同研究者の一人が管理職に就き、調査研究の旅費を使用できなかった。 2)調査研究が多かったので、研究会へのGuest Speakerへの謝金を準備していたが、使用しなかった。 3)次年度は、Guest Speakerによる研究会の役割を重視し、また資料コピー等に必要な機材等を購入し、十分に使用できるように、計画を立て実施したい。
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Research Products
(2 results)