2017 Fiscal Year Research-status Report
ナラティヴ・アプローチによる難病と高次脳機能障害の研究
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17K04121
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 准教授 (80312924)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己物語 / 高次脳機能障害 / 難病支援 / 支援の社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、高次脳機能障害に関する調査を中心に、ナラティヴ・アプローチを援用した研究を推進できた。富山県高次脳機能障害支援センターが主催するピア・サポート事業に参加しながら調査協力者とのラポールを形成し、研究成果の一部分については既に公表に至っている。 高次脳機能障害をもつ人および家族が直面する苦難は容易ならざるものであり、その支援も長期戦を余儀なくされる。近年、公的な就労支援に関しては、受け皿の充実という点でも、系統的な支援体制という点でも、大きな進捗が見受けられる。しかし、そうした支援のレールにのるには、まず就労する意欲・態度を明示できることが実質的な条件となっており、葛藤を抱えながらそうした意欲・態度表明をできないでいるような状態の人の場合には、支援の埒外となってしまうのが現状である。こうした部分においては、苦しむ人の語りに耳を傾けつつ辛抱強く変化に立ち会うような人間的な支援が必要であるが、そうした類の支援に関する研究は未開拓であることが明らかとなった。さらに、教育に関しては、公的支援の前進が必ずしも高次脳機能障害には結びついてないようにも見受けられ、高次脳機能障害者の居場所のなさと、過重な肉体的・精神的負担に悲鳴をあげる家族の様子が明らかになりつつある。 そうした問題を改善するためにナラティヴ・アプローチが有望であることを確認したうえで、方法論的な整理を行い、その可能性を明確にすることができた。 難病に関しては、全国難病相談支援センターとの協力的な関係のもと、ナラティヴ・アプローチにもとづいたピア・サポート研修のプログラム作成を前進させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の期待していた以上に、調査協力者とのラポール形成が進み、成果の一部を早い段階で公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をふまえ、調査をさらに前進させる。高次脳機能障害に関しては、成人期と児童・青年期との両方を視野におさめつつラポール形成をさらに進める。難病に関しては、現在進めつつある患者のケース研究をさらに進め、調査倫理にもとづく協力者との慎重なやりとりを経て、2018年度または2019年度に成果物を公刊できるよう進める。
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Causes of Carryover |
一部の図書に関して購入を見送ったことと、調査のための移動が予想よりも短距離で済むケースが多かったため。今後も使用が見込まれる費目であり、計画的に執行する予定である。
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Research Products
(3 results)