2018 Fiscal Year Research-status Report
ナラティヴ・アプローチによる難病と高次脳機能障害の研究
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17K04121
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 准教授 (80312924)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己物語 / ナラティヴ・アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に高次脳機能障害のピア・サポートに関する成果の準備と、難病に関するピア・サポートの推進・支援に関する成果の発表において、研究に大きな進展があった。 まず、高次脳機能障害に関しては、富山県高次脳機能障害支援センターが主催するピア・サポート事業に参加した成果として、具体的な面談でのやりとりを分析する論文を執筆し、『支援と物語(ナラティヴ)の社会学』の中の一章として発刊する準備を整えた(出版は他執筆者と協働して2019年度中に行う予定である)。これまで、苦しみを「聴く」ことの重要性を(難病も含めて)強調し、その点に「ピア」の特徴を求めてきたが、本論文ではそこからさらに一歩踏み込んで、「聴くこと」を表面的な傾聴の技法としてとらえるのではなく、聞き手の側からのはたらきかけを包含したやりとりの総体として「聴くこと」が実現されるという一歩踏み込んだ主張を行っている。 難病に関しては、たとえ社会学という非医系の知であっても、外部の専門知そのものからの押し付けではなく、ピア・サポーター自身がアクティヴなディスカッションの中から自信と知を獲得するやり方でピア・サポートを活性化するのが望ましいという観点から、各都道府県の難病相談支援センターでの研修に使用可能な演習課題を含むテキスト「ピア・サポーターを養成し、ともに活動するために」(西澤豊・川尻洋美・湯川慶子編『難病相談支援マニュアル』社会保険出版社の第8章(pp.231-267))を共同で担当し、その多くの部分を執筆した。このテキストがどのように活用可能か、期待通りの触媒となるのかについては、2019年度以降も継続して研修に参加しながら観察する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査の段階に応じて、十分な成果発表に向けたステップを踏んでおり、その経過も順調であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究および今後の計画に沿って、成果発表の準備と、その中での学術的な論点の発見を推進する。
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Causes of Carryover |
医療社会学関係図書および調査用機材の一部に関して、執行計画に変更が生じた。研究の遅れを示すものではなく、2019年度に同内容で執行する予定である。
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