2020 Fiscal Year Research-status Report
ナラティヴ・アプローチによる難病と高次脳機能障害の研究
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17K04121
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊藤 智樹 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (80312924)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己物語 / ナラティヴ / ALS / 高次脳機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究成果として、水津嘉克・伊藤智樹・佐藤恵編『支援と物語(ナラティヴ)の社会学――非行からの離脱、精神疾患、小児科医、高次脳機能障害、自死遺族の体験の語りをめぐって』(生活書院,2020年6月10日)、および、伊藤智樹『開かれた身体との対話――ALSと自己物語の社会学』(晃洋書房,2021年1月20日)を上梓した。 『支援と物語(ナラティヴ)の社会学』では、多様なフィールドをもつ社会学研究者との議論にもとづいて、現代社会における高次脳機能障害支援の文脈がもつ特徴をとらえ、主に家族が出口の見えない状況の中でもちこたえるための物語形成の場として、ピア・カウセリング実践を分析した。聞き手となる相談員は、傾聴を基本としながらも、一人称の語りと経験の相対的な一般化とを特性とする反応によって、来談者の物語構成に積極的に関与していた。 『開かれた身体との対話』においては、主に運動ニューロン疾患について看護学的研究で展開されているインタヴューによるナラティヴ・アプローチに一定の蓄積があることをレヴューし、それが結局のところ類型論に終始する点に限界があることを明らかにした。そのうえで、本研究代表者独自のフィールドワークにもとづくALS患者と配偶者、他のALS患者、患者会等で知り合ったいわゆる素人の支援者、医師、訪問看護師といった人たちが、それぞれの特性を有する物語の聞き手として機能していることを分析した。生存と自己決定という社会の基底的な理念ないし価値規範をなお重要なものと位置づけ、それらをより実現しやすくなるためには、公的支援制度の充実もさることながら、一般的には「精神的な支え」や「寄り添い」などと語られやすい人間相互のやりとりが重要であり、それを理論的にとらえる仕方を示す成果だったといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果物の出版
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のメインとなる部分に関して成果を公表することができたが、残る課題について最終年度で進捗を図りたい。難病においては、ALS以外の多様な疾患におけるナラティヴ研究の射程と可能性を検討するため、他の疾患事例についての研究成果について検討する。高次脳機能障害に関しては、現時点では主に家族同士のピア・サポートを中心に扱っているため、本人同士のピア・サポートの困難性と可能性について理解を深めるための準備的な検討とデータ収集を行いたい。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナ禍で出張の取りやめ、およびそれにともなう一部の図書等の使用時期の延期が発生した。しかし、本研究は追加調査よりも成果発信に重心を移しつつあり、次年度は、遠隔での資料収集と整理・保管、オンライン環境の充実のための使用を計画している。
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Research Products
(2 results)