2019 Fiscal Year Research-status Report
認知症概念の変容・浸透が支援実践に及ぼす効果に関する社会学的研究
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17K04128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 高志 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40432025)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 認知症の医療化 / 認知症フレンドリーコミュニティ / レビー小体型認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は当初予定では研究機関の最終年度であったため、研究成果の報告と発表に重点を置いて研究活動を展開した。昨年度に行なった保健医療社会学会でのコメンテーターとしての各地の地域福祉の先駆的実践へのコメントと、家族問題研究学会における報告は、論文化をして公表した。前者は、医療介護を超えた認知症の活動の意義を整理する内容のものであり、後者は、認知症の社会的位置付けの変化、それに伴って生まれてくる課題を理論的に整理したものである。また、昨年度に引き続き、関連学会で成果の報告を行なったが、今年度は日本認知症ケア学会、多文化間精神医学会という社会学ではない他分野での報告であり、社会学の成果を発表するとともに、多領域の研究者等との間での情報交換の機会ともなった。また、12月には所属する東京大学と台湾大学の社会学研究者とのジョイントフォーラムが開催され、ケアと移民に関するワークショップの中で発表をし、台湾大学の医療社会学を先行する研究者たちとの有益な情報交換の場となった。 以上のような発表と並行して、認知症支援から地域づくりを活動へと展開して行った奈良における実践について、代表者にインタビューを行なったり、レビー認知症サポートネットワークの活動も例年通り行いデータを収集しており、論文化の準備をしている。 また、上記のような今年度および本研究課題で遂行してきたことと、それ以前に蓄積してきたことをまとめた単著をまとめ、2020年夏に刊行が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの成果を報告することはできたが、今年度の調査実施とそのまとめが、特に2020年になってからの社会状況の混乱に伴い十分にできていない。成果の国際会議等での報告等も予定していたが、目処が十分にたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
レビー小体型認知症サポートネットワークをフィールドとした研究においてはデータは収集できており、学会報告の形で複数発表してきたものの、十分に内容を総括仕切れていない。そのため、このパートの論文化を行なっていく。医療福祉を超えた認知症の新しいムーブメントに関しては、全体的な動向を整理する理論的な検討を行うことができ、それ以前の認知症をめぐる実践との歴史的なつながりを示すことはできたものの、新たな活動に関する具体的な調査データを分析し、他国の動きと比較をしていくような作業が十分にできていない。そのため、2020年度は国際会議での報告も可能であれば行いつつ、進めていくことを計画している。
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Causes of Carryover |
研究採択時の職場から2018年度に異動をし、通勤経路等の関係で当初予定していた旅費支出等が不要となったため。また、2019年度夏の配偶者の出産とそれに引き続く育児、また2020年に入ってからの社会状況の変化に伴う研究遂行の難しさ等から、調査やそれに伴う人件費等を支出することができなかった。また、予定していた国際学会へのアプライも難しくなっている。
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