2022 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the selection and management of employee appearance through "aesthetic labour"
Project/Area Number |
17K04130
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西倉 実季 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 准教授 (20573611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星加 良司 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (40418645)
飯野 由里子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任准教授 (10466865)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 美的労働 / 接客サービス労働 / 文化資本 / 性的客体化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代日本社会のサービス産業をフィールドに、美的労働を通じて企業が従業員に求める外見の具体的様相とそこに潜む排除の問題を明らかにしたうえで、美的労働への従事が従業員の心身に与える影響を検討することである。 最終年度は、これまでに実施したアパレル産業の接客業従事者を対象とするインタビュー調査で得られたデータをもとに、美的労働が引き起こす問題について検討した。先行研究においては、美的労働の問題点として、①中流階級の文化資本に適合的な「美的スキル」が要請されるため、外見に基づく労働者の階層化がなされること、②とりわけ服装規定において女性従業員の性的客体化のプロセスが組み込まれており、ジェンダー不平等が再生産されることが指摘されてきた。検討の結果、①については、インタビュー対象者たちは研修や管理者による日々の指導を通じて接客場面における言葉づかいへの注意を要求されてはいるが、それらはあくまでも「お客様に失礼のない」「ていねいな」言葉づかいであり、「より上層の社会階層であるように聞こえる」ものとは言えないことがわかった。②については、女性のインタビュー対象者たちはたとえば身体に密着する制服の着用等を通じて明示的に「女らしさ」を表現することが要請されているわけではないが、男性従業員とは明確に区別される「女性従業員」としての外見とふるまいを期待されていることが明らかになった。 以上の分析より、美的労働概念が用いられる範囲は拡大しつつある状況において、何が「美的」とされるかはその労働が行われる文脈(市場や顧客の特性など)によって異なりうるため、先行研究が想定してきた中流階級性や白人性を前提とする「美的スキル」以外にも留意する必要があるという示唆が得られた。また、先行研究が着目してきた性的客体化とはやや異なる女性従業員の「審美化」のプロセスに焦点を当てる必要性が示された。
|