2020 Fiscal Year Research-status Report
フィンランドの社会福祉・医療保健制度および地方制度改革に関する総合的な研究
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17K04138
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
田中 里美 都留文科大学, 教養学部, 教授 (00300129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フィンランド / 福祉国家 / 社会福祉・医療保健制度 / 地方自治制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、福祉国家が、これを支えてきた諸条件の変化を前に、その持続可能性を確保するための模索を行っていることに関心を寄せ、フィンランドを事例に、社会福祉・医療保健サービスの提供体制の大規模な改革に注目するものである。 具体的には本研究は、従来、基礎自治体(以下、クンタと表記)の責務であった社会福祉・医療保健サービスの提供を、複数のクンタから構成される単位に議会を創設し、これを広域自治体としたうえで、これに移譲する改革を企てたフィンランドを対象として、2019年1月1日の新制度の施行までの準備、施行後の過程に並走し、制度改革の全体を検証することを目的とした。 研究期間は、2017年度から2020年度までとした。研究の当初計画では、2020年度は改革施行後の問題点等を検証する、研究の最終年度であった。しかし、改革準備は滞り、2019年4月の総選挙では、改革準備を主導してきた中道右派政権が倒れ、中道左派政権への政権交代が起こり、改革は中断した。2019年秋、新しい内閣の下、改革の準備が再び始まり、2020年秋に改革の基本方針が明らかになった。 2020年度は、関係省庁のホームページ、新聞三紙を利用して、改革準備の進捗状況のフォロウに務めた。これに加えて、二つの自治体での聞き取り、資料収集を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、現地での情報収集が出来なかった。 2020年度は、研究対象である改革の準備自体に目立った進捗が見られなかったこと、データ収集の方法が限られたことから十分な成果を得ることが出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
二つの理由で遅れている。 まず、研究対象である制度改革自体の大幅な遅れ(本研究計画を立案した段階では、2019年1月1日開始とされていた改革が、2023年1月1日開始となった)のため。また、新型コロナウィルスの感染拡大により、現地での情報収集が出来なくなったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象である改革は、2021年秋に関連法が施行され、広域自治体に設置される暫定機構がスタート、2022年年初に広域自治体に設置される議会の選挙が行われ、同年3月に広域自治体の議会がスタートする予定である。 前政権下では、改革の準備作業の遅延により、広域自治体の議会選挙が実現しなかった。本科研は研究期間を一年延長したことにより、改革の要である広域自治体の議会設置までを見届けることが可能となった。 制度改革の準備について、引き続き、関係省庁ホームページおよび、新聞三紙を中心にネット上で公開されている情報をもとに、改革の概要、基礎自治体、広域自治体レベルでの準備状況について整理を行う。 渡航制限緩和の状況を見て、現地での情報収集を試みる。現地での情報収集が可能でなければ、調査対象としていたトゥルク市、ロバニエミ市の自治体関係者に、ビデオ通話による聞き取り調査を試みる。 2022年3月、広域自治体の議会の成立を見届けてから研究報告書を作成する。フィンランドの社会福祉・医療保健サービス改革のスケジュールと、本科研研究期間終了のタイミングから、今年度は学会発表は予定しない。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のために現地調査が実現せず、旅費が未使用のまま残ったため。感染拡大もしくは終息の状況に応じて、現地での聞き取り調査、オンラインでのインタビューのいずれにも対応できるよう、旅費の他、ノートパソコンおよびデスクトップパソコンの購入を行う。また、福祉国家の改革に関する書籍の購入を行う。
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