2017 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティラジオがつくる震災の記録と記憶の可能性に関する研究
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17K04139
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Research Institution | Institute of Advanced Media Arts and Sciences |
Principal Investigator |
金山 智子 情報科学芸術大学院大学, メディア表現研究科, 教授 (40383971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 明子 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (00351156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コミュニティラジオ / 集合的記憶 / コミュニティアーカイブ / 自然災害 / 原発事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる平成29年度は、研究会を開催し、研究の大枠(スケジュール、研究内容、調査方法、調査スケジュール、成果発表)などの検討を実施した。また、基本的な文献調査や先行研究調査を実施した。 コミュニティラジオ局の訪問調査に関しては、東日本大震災から7年目となり、現存していた臨時災害放送局が平成30年3月に全て閉局されることから、これらの臨時災害放送局に対しては今年度に調査を実施することとした。このため、福島の原発事故に関わる記憶と記録の調査を最優先し、4局(FMいわき、南相馬ひばりFM、富岡町おだがいさまラジオ、FMポコ)を対象としたヒアリング調査を実施した。この定性調査より、原発事故における地域の分断や亀裂といった可視化されない問題と、地域コミュニティに寄り添うコミュニティラジオの立ち位置や苦悩など、これまで明らかにされてこなかった貴重な知見を得ることができた。また、現在進行形の問題に対する記憶と記録のあり方についても重要な視点を得ることができた。東日本大震災の他の被災地でも調査も開始した。本年は、震災後7年目の震災記念日後に、宮城県5市(岩沼、名取、塩釜、石巻、気仙沼)のコミュニティラジオ局でインタビューを実施し、復興への考えや思いの相違と放送内容について理解を得ることができた。これらと比較する上で、阪神淡路大震災の記憶に関してFMわいわいにヒアリングを行った。 調査結果の一部は、平成30年6月に米国オレゴン州ユージーン市で開催される国際メディアコミュニケーション学会(International Association for Media andn Communication) にて発表(論文タイトル”The Role of Community Media under Nuclear Emergency Conditions in Fukushima”)を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査全体としてはおおむね順調にすすんでいる。調査対象に関しては、取材先の状況などによって、予定していた順番を変更したり、翌年予定の調査と入れ替えたりといった調整は不可欠となっているが、それでも全体としては予定の対象となるコミュニティラジオ局からの協力は得られている。 また、初年度の研究成果も国際メディアコミュニケーション学会で発表することとなり、成果報告に関してもおおむね順調である。今回は、福島原発事故に関する記憶と記録とコミュニティラジオの論文を発表することもあり、「持続可能の再想像」をテーマにした国際学会での議論に貢献できると考えている。 一方、先行調査など他の先行研究に関する分析やまとめはやや遅れており、これに関しては平成30年度に実施する予定である。分析の視点に関しても、当初考えていたよりも多面的(もしくは新しい視点)による分析が可能かつ必要であることが見えてきており、研究会でこれについて議論を深めていきた。また、本研究のデータに関しても、対象とする震災が長期にわたっており、時間軸をもった比較研究といった視点からも本研究を検討していく必要があると考えている。このように、調査をすすめていくと同時に、より仔細な分析を実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、東日本大震災の被災地におけるコミュニティラジオ局のヒアリング調査(岩手県)を継続、全て完了させる。また、他の自然災害による震災地域(奄美大島および北海道有珠山)での訪問調査を実施する予定である。 これらの調査に関しても、成果をまとめ、国内学会や国際学会で発表することを目指す。また、国際ジャーナルにて発表していくことを目指す。 また、研究2年目となり定性調査データに関して、理論構築に向けてより詳細な分析を実施していきたい。他のコミュニティメディア研究者やコミュニティアーカイブ研究者らを招いた研究会を実施し、本研究の知見や理論構築をもとに議論を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた調査の一部(東日本大震災被災地でのヒアリング調査)が、先方の予定により、平成30年5月の実施に延期されたことによる。
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Research Products
(1 results)